15歳で生け贄に…南米アンデスの山頂で見た「凍結ミイラ」の衝撃

写真家・石川直樹『地上に星座をつくる』より
石川 直樹

彼らは神の住処に近づこうとした

山の上は極度に乾燥し、気温が低い。そのため、3体の子どものミイラは、今にも動き出しそうな状態で現代に残された。

インカ文明が途絶えて数百年がたった今も現代の私たちに衝撃を与えるこうした事実は、ぼくを混乱させるばかりだ。はっきりしているのは、彼らが目指したのは登頂ではなく、神の住処にただ近づこうとしたということだけである。

頂上から下山を開始し、ベースキャンプにたどり着いたときには夕方になっていた。その日の行動時間は15時間にも及び、トラルグランデへ戻ったときには、言葉を発する元気もなく、今にも倒れそうだった。

 

地球の裏側にある南米にやってきて、さらに7000メートル近い高峰に駆け上がり、そこから500年以上の時間の中に沈潜していくという奇妙な旅によって、帰国した今も、内にある平衡感覚のようなものがずれたままになっている。

時差ボケという言葉では表せない、いわば時空のねじれのようなものを自分の内部に感じるのは、時が止まったままの少女のミイラを見てしまったからだろう。

夏の盛りの南米、極寒の高所、真冬の東京、そのどれにもなじめないまま、どこでもない場所に放り出されてしまったような居心地の悪さを、今この瞬間も感じている。

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