15歳で生け贄に…南米アンデスの山頂で見た「凍結ミイラ」の衝撃

写真家・石川直樹『地上に星座をつくる』より
石川 直樹

ミイラとして見つかった少女が育った街

リマから空路でクスコに入った。標高3400メートルに位置するインカ帝国の首都だった街である。インカの宇宙観では、たどり着くことすら困難なこの都こそが世界の中心とされた。

都には城がある。太陽を崇拝した人々は、城を「コリカンチャ」(太陽の神殿)と名付け、まわりを石壁で覆い、そこに黄金を施したという。栄華を極めたかつての城は、今は教会になっている。

現在も残る石組みはインカのものだが、その後にやってきたスペイン人によって、教会へと改修されたのだ。

アンデスの山頂で凍結ミイラとなって見つかった「ドンセリャ」は、このクスコの街で育った。現在はサンタカタリーナ修道院となっているが、昔はそこに太陽の処女の館なるものがあり、ドンセリャをはじめとする子どもたちが暮らしていたという。

 

生け贄にされた子どもたちが辿ったであろう道は、クスコから標高4335メートルのラ・ラヤ峠を越えて、琵琶湖の12倍もの大きさを持つチチカカ湖のほとりへと続く。

チチカカ湖の中に突きだした半島の突端に、ソカという昔ながらの暮らしを続ける小さな村があるというので訪ねてみることにした。

村には90歳のシャーマンがいて、ある儀式を見せてもらった際に、リャマの胎児のミイラを燃やす場面に遭遇した。昔はリャマではなく人身御供だったといい、人間や動物を神に捧げるインカの痕跡が見てとれる。

自然からの恵みを享受するばかりでなく、災いとして降りかかる天変地異に対しても、人間の命を捧げることによって、どうにか神に報いようとした人々の気持ちはわからなくもない。

空の彼方にいる神に、人間を含む動物の生命をもって応えたインカの人々の思想には、今も続く物々交換の考え方や、自然に対する強烈な畏怖の念を感じる。

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