〔PHOTO〕「ゲンロンカフェ」公式サイトより

経営危機に陥ったゲンロンが「大復活」を遂げることができたワケ

『ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる』より
批評家・作家の東浩紀氏の新著『ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる』が売れている。ゲンロンの10年を綴った物語。経営危機に直面したとき、どのようにして乗り越えることができたのか。そこには現代の日本社会に漂う効率化とは正反対の精神があった――。

本稿は、東浩紀著『ゲンロン戦記』(中公新書ラクレ)の85~93ページを再編集したものです。

 

ゲンロンカフェ誕生秘話

ゲンロンが経営危機に陥った2013年から14年のあいだ、潰れなかったのはゲンロンカフェがあったからでした。

この時期のゲンロンはスタッフを大幅に減らし、出版事業はほぼストップしていました。友の会の会報のみ発行していましたが、それでは会員数も増えるわけがなく、会費収入も伸び悩んでいました。友の会会員は、この時期に2500人近くから1800人まで一気に3割近くも減っています。世間から見れば、ゲンロンは急に活動が鈍ったように見えていたはずです。

そのなかで唯一売り上げを伸ばしていたのがゲンロンカフェでした。その後も確実に売り上げを拡大し続け、いまではゲンロンの事業の中心になっています。読者にも、ゲンロンの本は読んだことがないけど、ゲンロンカフェの番組は見たことがあるというひとがいるのではないかと思います。

ゲンロンカフェは東京の五反田にあるイベントスペースで、2013年2月にオープンしました。月6回から10回ほどのトークイベントを開催し、その模様をネットで中継しています。コロナ禍でいまは無観客の配信のみとなっていますが、もともとは登壇者とお客さんの「密」な交流も売りでした。いつもぼくが出演するわけでなく(というよりも最近ではぼくが出演するのはせいぜい月1、2回で)、多方面のトークが企画されています。ゲストは多士済々で、国民的に著名な方から無名の新人まで、さまざまなひとが登壇しています。宣伝では「日本最強のトークスペース」というコピーを使っていますが、けっして言い過ぎではないと自負しています。