2021.01.05
# 恐竜

恐竜は越冬できたのか?地球の果てで発見された、小さなティラノサウルス

ティラノサウルス徹底研究 第9回
小林 快次 プロフィール

ナヌクサウルスが大きく進化しなかったワケ

ちなみにこのノーススロープでは、他にも次のような恐竜が発見されています。

 ・パキリノサウルス
 ・エドモントサウルス
 ・トロオドン
 ・ドロマエオサウルスの仲間

これらいずれも、カナダ南部やアメリカ西部からも見つかっている恐竜です。

私やフィオリロ博士は、アラスカ州の恐竜調査で、「恐竜の極限環境への適応」について研究しています。テーマの1つには、「恐竜は越冬できたのか?」という大きな問いがあります。

ある研究者は、「ノーススロープの恐竜たちは、夏にアラスカに来て、冬になったら南下して暖かいところで過ごしたのではないか」ということを言いますが、これはとんでもないお話。「だったら一度、アラスカを縦断してその広さを確かめてみろ!」と言いたくなります。

毎年、行き帰りの2回、大きな川を渡って高くそびえ立つ山脈を越える。車を使っても一苦労なのに、恐竜たちがそれほど危険な長旅を頻繁におこなっていたとは、とても考えられません。

こうした「恐竜が季節ごとに移動した」という考えは、トナカイが1シーズンで数千キロ移動する事実を参考にしているようですが、トナカイは決して何千キロも移動しているわけではなく、総合移動距離が数千キロであるに過ぎません。一度でもアラスカの大きさと厳しさを体感したら、このような仮説はまず出てこないはずです。ナヌクサウルスは、きびしい冬場もこの地で耐え抜いていたと考えるべきでしょう。

ナヌクサウルスはこの研究で、めでたくティラノ軍団の一軍入りが確定していますが、他の一軍メンバーよりも小さいのが特徴です。体長が5メートルほどしかないのです。

なぜナヌクサウルスは大きく進化できなかったのか。その理由は、ノーススロープの厳しい環境にあったのではないでしょうか。私自身、アラスカで体験していることですが、アラスカの夏至は太陽が沈みません。その反面、冬至が近づくと太陽が昇りません。

限られた日照時間では、生える植物も植物食恐竜も限られてしまうため、深刻な食糧難に見舞われます。さらに、冬には川や湖も凍ってしまい、飲み水の確保もままなかったはず。このような厳しい環境が、小さな巨人・ナヌクサウルスを生み出した要因であると考えられます。

もちろん、それも今はまだ仮説の1つに過ぎません。今後の調査・研究で、さらなる真実が明らかになっていくかもしれませんね。

* * *

次回『ティラノ軍団の分類を刷新する発見!長い鼻づらの「ピノキオ・レックス」』

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