ペーパー離婚から事実婚へ。親の反応は?

実は知子さんは、婚姻届を出す前に事実婚も選択肢として視野に入れ、正雄さんと話し合ったこともあったという。しかし、2人にとって事実婚はデメリットがありすぎた。

一番のデメリットは、急病や事故で病院に搬送された際、事実婚の配偶者だと立ち会えなかったり、医療行為に同意できなかったりする可能性があること。実際、これは病院によって方針が違う。だが、パートナーの命に関わる瞬間に法律婚の配偶者でないからといって排除されるリスクは、ぜひとも避けたかったのだ。

他に、遺言書がない場合には相続人になれない、年金保険3号被保険者に加入できない(厚生年金保険法では事実婚でも加入可だが、従わない企業がある)、扶養控除に入れない(企業によって規定が異なる)なども事実婚のデメリットとしてある。

「でも、実を言うと、結婚前は僕のほうが事実婚についてそこまで真剣に考えてなかったんです。今思うと、本当に彼女には申し訳ないことをしたと後悔しています」と正雄さん。

2人が幸せに暮らすにはデメリットに目をつむってでも事実婚するか、正雄さんのほうが知子さんの姓に変わるしかない。かと言って、正雄さんにも自分が経営している会社がある。仕事上、彼も自分の姓を変えたくはない。結果、事実婚するしか選択肢がない、ということになった。

〔PHOTO〕iStock
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結婚から半年後、2人がペーパー離婚を経て事実婚に切り替えることになったことをそれぞれの親に報告すると、知子さんの母は「2人が決めたことだからよいと思う」とサポートしてくれた。

反面、正雄さんの両親は以前の正雄さんと同じく、選択的夫婦別姓の概念さえ理解していなかった。そこで2人は諸外国の状況や日本での運動を含む選択的夫婦別姓に関するあらゆる資料を集めて、知子さんの適応障害の件を説明した。正雄さんの父親は数ヶ月かかってやっと理解を示してくれたが、母親は理解をしてくれているのかどうか、本当のところは未だによくわからないという。ちなみに、親戚や知り合いには話していないそうだ。