夫婦同姓の苦しみ Case02:夫の姓を名乗り、適応障害に】

「ご報告が遅くなりました。最終的に男女共同参画基本計画案から『夫婦別姓』の文言も削除させました。一安心です」

12月17日、自身のアカウントでそうツイートした自民党の杉田水脈衆院議員。15日に、政府による「第5次男女共同参画基本計画案」の改定案が自民党によって了承されたことを受けてのものだ。改定案では、「選択的夫婦別氏制度の導入」の文言が削られていた。

この投稿を見て、暗澹たる気持ちになった人はどれほどいただろうか。世界を見渡しても、夫婦同姓を強制する国は日本だけだ。国連もこれまで3度にわたり、夫婦同姓の強制は女性差別だから是正するようにと日本に対し勧告してきた。

最近行われた選択的夫婦別姓に関する大々的な意識調査でも、「賛成」が7割以上にのぼっている(※)にもかかわらず、自民党の保守系議員の中には「選択的夫婦別姓が家族の絆を損なう」と指摘する人がいる。夫婦同姓の強制によって逆に家族の絆を試されている夫婦がいることを、彼らは知っているのだろうか。

夫婦同姓の強制に苦しむ男女を紹介する本連載。今回は、夫の姓を名乗ったことで妻が「適応障害」になってしまった夫婦の話を紹介したい。

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「いつか慣れるだろう」と思っていた夫

今回話を聞いたのは、都内在住の山本知子(仮名 26歳)さんと、彼女の夫の多田正雄(仮名 34歳)さん。2人はそれぞれに自営業で、結婚して2年経つ。

結婚する前から知子さんは自分の姓を変えたくないという気持ちを抱いており、正雄さんになんとなく伝えてはいたが、実際にきちんと伝えることができたのは結婚式の少し前だったという。

〔PHOTO〕iStock

当時、正雄さんは家族で経営する会社の社長に就任したばかりで、自分の本来姓「多田」で会社にまつわる登記や手続きを行っていた。そのため、正雄さんは自分が妻の知子さんの姓「山本」になった場合と知子さんが夫姓「多田」になった場合の手続き、そして、婚姻制度の仕組みを確認しに区役所へ行った。

会社に関する手続きを正雄さんの姓ですでに行っていたことから、説明を聞いて改めて、自分の姓「多田」で婚姻届を出すことのほうが合理的だと感じた正雄さん。結果的に、彼は知子さんを押し切って婚姻届を出してしまった。「妻もいつか慣れるだろう」と思っていたのだ。正雄さんは知子さんの名前に対する思いを、この時はまだ理解していなかった。

※早稲田大学の棚村研究室と市民団体「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」の合同調査。2020年10月22日~26日に、全国の60歳未満の成人男女7000人を対象に行われ、「賛成」は70.6%だった。