座間事件の犯行現場となったアパート(PHOTO:wikimedia)

座間事件の「論じ方」〜専門家が「経験と想像」で分析することの危険性

原因は結局わからないまま…

座間事件でわかったこととわからなかったこと

2020年12月15日に死刑判決が下された座間9人殺害事件について、私は判決当日に「現代ビジネス」に寄稿し、「結局、事件の肝心なところはわからなかった」と述べた(「座間9人殺害事件『死刑判決』、“最大のナゾ”は結局わからなかった」)。

わかったことと言えば、白石隆浩被告の特異なパーソナリティ、前途を悲観した多数の若者の存在、そして本来なら出会うはずのない被害者と加害者を結びつけたSNSの危険性などである。

白石被告のパーソナリティについては、事件発生直後から「サイコパス」の特徴に当てはまる部分が多いことを指摘したが(「犯罪心理学者が読み解く、座間9遺体遺棄事件『最大のナゾ』」)、それは裁判で明らかになった事実からも確認できた。

〔PHOTO〕iStock
 

しかし、本件に至るまで大きな反社会性や攻撃性が見られなかった被告が、なぜ20代も半ばを過ぎて、突如としてこれほどの猟奇的事件を連続的に起こしたのか、その原因については結局わからないままなのである。

サイコパスと呼ばれるような犯罪者や重大事件の犯人は、幼少期から多種多様な問題行動を頻発させていることが、エビデンスの示すところなのだが、白石被告にはそれがあてはまらない。幼少期からの反社会性は、脳の機能障害の可能性が大きいこともわかっている。しかし、白石被告にはこれらが当てはまらないのである。

これが科学の限界であり、現時点での犯罪心理学の限界である。したがって、残念ではあるが、わからないことはわからないと述べることが、科学者としての誠実な態度であると私は考えている。