今から14年前の29歳のとき、松さんは乳がんの告知を受けた。左乳房に悪性腫瘍が2つ。腫瘍は1センチ以内が「早期発見」といわれるステージ1または0とする指標に対して、松さんの腫瘍は6センチ。ステージ2bだった。乳がんにまつわるエピソードは彼女の著作『彼女失格』(幻冬舎刊)、『女子と乳がん』(扶桑社)に詳しい。

連載2回目の今回は、38歳で結婚し、43歳になった松さんがいま、「子ども生まなくてもいい」と思う理由を綴っていただいた。

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乳がんになったとき心配したこと

結婚6年目の43歳の今、わたしには子どもはいない。14年前の乳がん治療の影響なのか、38歳での結婚ゆえなのか、そもそも授かりにくいのかは今となってはわからない。まあ、いないのです。

乳がんの告知後、真っ先に心配したのは妊娠する機能の温存だった。

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2017年7月、日本癌治療学会が「小児、思春期・若年がん患者の妊よう性温存に関する診療ガイドライン2017年版」を公表した。けれどわたしが29歳で乳がんに罹患した14年前、がん治療における妊よう性の温存療法(がん治療を優先しながら、妊娠できる能力を温存すること、妊娠を維持することを応援する医療の一つ)は、今ほど一般化されていなかった。がん治療は内容によって生殖器の機能不全や切除を余儀なくされるが、「若年性がん患者の治療の後の出産・育児への重要視」は、病院の方針により大きく異なった。

妊よう性は一度失うと代替・回復するのは不可能だ。だからこそ、ガイドラインができる10年前に乳がんを告知されたわたしは、治療と妊よう性の両立についてそれはもう大いに戸惑った。

けれど当時、未婚・29歳のわたしに対して、医師達は口を揃えて「未婚で出産の予定もないなら、今は命を優先するべき」と断言。がん治療に対する予備知識のなさや心構えができていないわたしは、その「べき論」を前に「そういうものなのか……」と、それ以上妊よう性について相談することをやめてしまった。

この「(がんとは、社会とは、女とは)そういうもの」という刷り込みが、のちのち自分を苦しめることになる。