1話3分で読める、大人気のミステリーシリーズの最新刊『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー 闇の中の真実』より、5日連続で中身を公開します。
まただ。中村は自宅のポストを見てうなり声を上げた。ポストをあけて、中から一枚の紙切れを拾い上げる。そこにはこの紙の届いた日時が記されていた。
『九月十五日 十三時』
間違いない。この時間は間違いなく家にいた。その間、一度もベルは鳴らなかった。それで不思議に思ってポストをのぞきに来たら、いつの間にかこの紙切れが入っていた。
中村は家に戻り、妻と子どもたちを呼んだ。
「なあ、玄関のピンポンは鳴ったか?」
「鳴ってないよ」下の娘が元気に言った。
「私も聞いてないわ。ひょっとして、また宅配便の不在通知が入っていたの?」
妻の問いかけにうなずくと、中村は電話を取り出し、紙切れに書かれていた電話番号を押した。宅配便の再配達受付用の電話番号だ。繋がると、機械音声の案内が流れた。
『再配達のご要望は……』
もう何度めだろう。これに従って時間を指定しているのに、指定どおりに配達がきたことが一度もない。なのに、気づけば不在通知の紙切れが入っている。
「ピンポンが壊れてるんじゃないの?」上の娘が言った。念のため玄関に出て鳴らしてみると、ピンポーンと音が響いた。壊れていないし、鳴って気づかない音量ではない。
もしかすると配達員がサボっているのかもしれない。荷物をなくして、それを誤魔化すためにこっそり不在票を入れて帰ってしまうなんていう話を聞いたことがある。
ならば直接文句を言ってやろう。中村は電子音声の案内を切り、今度は問い合わせ窓口の番号に電話をかけた。プルルルと呼び出し音が響くが、何分待っても繋がる気配はない。そのとき、片付けものをしていた妻が現れてつぶやいた。
「なんか、最近いろいろなくなっている気がするのよね。時計が、引き出しにしまったはずなのに見当たらないの。この間はネックレスが消えたし……」
妻の言葉と、いつまでも呼び出し音が鳴り続ける電話の音を聞きながら、中村はようやくある可能性に気づいた。