巨大IT産業時代の終焉なのか―中国で重大な地殻変動が起きつつある

習近平のAlipay叩きが示す未来
野口 悠紀雄 プロフィール

共産党の逆襲

こうした事態は、中国共産党が考えていたのとは異なる展開であったに違いない。そしてこれまでも、金融や情報を国家の手に取り戻すための方策を模索していたに違いない。

実際、規制は徐々に強化され、AliPayなどの特権的地位は、徐々に制限されてきた。その最終的手段が、中央銀行デジタル通貨であるデジタル人民元だ。これによって電子マネーの場合と同じように詳細な取引データが、中国人民銀行(および中国共産党)の手に入る。これは国民支配のための極めて貴重なデータだ。

デジタル人民元はいま実証実験がなされている段階だが、ここに参加しているのは4大商業銀行だ。AliPayや WechatPayなどの民間の電子マネーはどういう位置づけになるのか、はっきりしない。いまのところ、これらは中央銀行デジタル通貨のネットワークの中には入っていない。

仮に将来取り入れられるにしても、現在取引データを独占している現在の状況からはかなり変わらざる得ないだろう。

中国はすでに2019年に「暗号法」を制定している。その中で最も重要なのは、最高クラスの暗号は国家が管理するとしていることだ。これは、デジタル通貨によって得られる情報を中国政府(共産党)が管理することを狙ったものではないかと考えられる。

自由な経済活動によってこそ経済が発展するというのであれば、それは国家が経済活動をコントロールするという共産党の基本的な理念に矛盾してしまう。現在の状況が続けば、共産党は市場経済の中に融解してしまう。

 

市場経済活動=自由な経済活動と共産党の理念は、もともと相容れないものだから、どこかで衝突が起きるのは必然だった。いま起こっているのは、その最初の現れなのかもしれない。

関連記事