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はやぶさ2成功が証明した日本のものづくりの凄さ

福島の中小企業が作り出した、世界初の小惑星衝突器

小惑星リュウグウの地表の砂をたっぷりと持ち帰った「はやぶさ2」。ほかにも直径約10mの人工クレーター作成、着陸精度約60cmの驚異のタッチダウンなど、7つの「世界初」を達成し、完璧ともいえるミッションを成し遂げた。

実は、その成功の陰には、日本の中小企業の献身的ともいえる協力があった。『ドキュメント 「はやぶさ2」の大冒険』で2195日にわたり密着取材したNHKリュウグウ着陸取材班が知られざるインサイトストーリーを紹介する。

日本企業100社が「はやぶさ2」開発に協力

『ドキュメント 「はやぶさ2」の大冒険』でも書いたことだが、2195日にわたり密着取材して驚いたのは、はやぶさ2の完璧ともいえる大成功の裏は、実に多くの中小企業の献身的なサポートがあったことだ。

宇宙空間は、放射線が飛び交っている過酷な環境だ。機体の温度変化も数百度と極端だ。真空環境は地上と違った影響が機器にはある。つまり6年にわたる宇宙の旅を目立った故障もなく成し遂げたということは、きわめて高い品質が保証されたということだ。開発に関わった会社はおよそ100社。特筆すべきは広い分野から大小さまざまなメーカーが参加していることだ。

設計開発の中心はNECだ。実はNECからははやぶさの開発に携わった5人が現代の名工に選ばれている。技術の高さを物語る。また岩石を採取する鼻のように伸びたサンプラホーンを開発したのは住友重機械工業だ。細かく噴射し機体の姿勢を変えるスラスタは三菱重工業。機体を温度変化から守る多層断熱材は宇部興産、地上システムの一部は富士通といった具合だ。

【写真】はやぶさ2本体はやぶさ2本体 photo by JAXA

さらに存在感を示すのが日本の中小企業・町工場だ。驚くことに、はやぶさ2を構成する重要パーツの多くを中小企業・町工場が担っているのだ。すべての企業を紹介したいところだが、ここでは代表選手としてNHKのニュースでも紹介した4社の開発秘話を取り上げたい。その現場に触れると、なぜはやぶさ2の成功がものづくりの実力の証明になるのかを実感していただけると思う。

探査成功の鍵を握った「宇宙のランプ」

神奈川県の郊外、海老名市にある相鉄線さがみ野駅で降りて、住宅街の中を10分ほど歩くとその会社はある。「ミヤタエレバム株式会社」。大正6年の創業の老舗企業だ。カメラのストロボをはじめ、医療用のランプなど多様なフラッシュランプの製品を作っている。従業員は40人ほど。決して大きな会社ではない。住宅に囲まれた敷地に事務所と工場がある。少し大きな町工場といった趣だ。

【写真】ミヤタエレバム株式会社ミヤタエレバム株式会社の社屋と、工場内の様子(右)

この会社なくして、実はピンポイントタッチダウンは成功しなかった。会社が担当したのは、はやぶさ2の機体底部に取り付けられたランプだ。着陸の時、これを光らせて降下する。その光を受けて、小惑星に落としておいたターゲットマーカが反射して輝く。

【写真】下部に等刺されたターゲットマーカーはやぶさ2の本体下部。5つある球形のものがターゲットマーカ。投下されたマーカに光を当てる。中央は衝突装置(インパクタ) photo by JAXA

明るく目立つターゲットマーカをはやぶさ2の"目"であるカメラが視野に入れ、自分が飛んでいる位置を正確に把握。目指す着陸地点へ機体を的確に誘導する。ピンポイントタッチダウンを行うには不可欠な最重要パーツだ。

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