コロナ禍によって、あぶりだされた問題、余儀なくされた変化、あるいはまったく変わらなかったことも含めて、世の中を俯瞰してみると、ポストコロナの世界は、地球上の人々が同じ問題に対して「考える」きっかけを作りました。現代を生きる私たちに一石を投じたようにも思えるコロナの存在。さまざまな角度から世界を見つめる識者たちに、感じたことを語ってもらいました。

今回、お話を伺ったのは、文筆家の佐久間裕美子さんとSlow Factory Foundation 主宰のセリーヌ・セマーンさん。自分の消費行為が誰かの自由を脅かしているかもしれないという自覚を持つことや、持続可能な未来への大きな課題について語ってくださいました。

●お話を伺ったのは…
佐久間裕美子(さくま・ゆみこ)

ニューヨーク在住の文筆家。著書に『真面目にマリファナの話をしよう』(文藝春秋)、この夏、続編を刊行予定の『ヒップな生活革命』(朝日出版社)など。ポッドキャスト「こんにちは未来」でも、最先端の世の中をテーマにしている。

セリーヌ・セマーン
レバノン出身。内戦中に難民として出国し、その後カナダに移住。利益を寄付するソーシャル・エンタープライズとして立ち上げたSlow Factory Foundation、非営利のアドボカシー団体に成長し、企業の持続性改善をコンサルティングする。

環境の持続性というものは、
地球の健康だけの問題ではありません

ーーコロナ禍が起きる前から、資本主義やグローバリゼーションの脆弱性を指摘し、システムの書き換えを提唱してきたビジョナリーがいる。ファッションのサステナビリティを、人権や環境正義といった観点から説き続けてきたセリーヌ・セマーンに佐久間裕美子が話を聞いた。

佐久間 コロナウイルスの感染が広がり、国際貿易や流通が止まったときに、すぐにセリーヌが言い続けてきたことは正しかった、今、彼女は何を考えているだろうかって考えたんです。

セマーン 信じられないような気持ちで見つめていました。私がこの世界に入ったきっかけは、クリエイティブ・コモンズのムーブメントに参加して、透明性と情報のアクセスの平等化を訴えるアドボカシー(権利擁護)を始めたことです。それを起点に、8年前に、ファッションの世界におけるサステナビリティを専門にするようになりました。地球環境にダメージを与えないシステムの構築をファッション企業に呼びかけてきましたが、無視されることも多かった。

今、こうなって「ほら! 言ったじゃない!」と言いたい気持ちにもなるのですが、ようやく自分の主張してきたことに世界が気付いてくれたことに身が引き締まる思いもあるし、今も変革の速度が追いつかないことにフラストレーションもあります。これまでは、意識を高め、知識を深めてもらうことに注力してきましたが、せっかく今、ようやく話を聞いてもらえる環境になったのだから、具体的なアクションにつなげるフェイズに入ったのだと感じています。

〔PHOTO〕iStock

佐久間 昨年は、SDGsとファッションというテーマで、国連でワークショップの企画に携わったりもしていました。今、何を思っていますか。

セマーン SDGsが目標として掲げられたことは評価しましたが、同時に、SDGsには具体的なアクションプランがない。貧困を撲滅する、というアイディアは聞こえはいいですが、それをどうやって実現すればいいのでしょう? 足りないのは、持続性を取り戻す過程の成否をはかる評価システムです。ファッション業界で評価の軸として使うことができ、また他の業界にも転用できるオープンフレームワークを今、構築しているところです。ここで大切なのは、世界の持続性を取り戻すためには、グローバル規模の変革が、トップダウン、ボトムアップの両方から起きることが不可欠だということ。