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はやぶさ2には、地球を防衛する「裏ミッション」が存在した

知られざる兄弟機構想も

小惑星リュウグウの地表の砂をたっぷりと持ち帰って、ミッションを完全成功させた小惑星探査機「はやぶさ2」。2021年には、人工クレーターを作って取り出したリュウグウ地中の砂を採取した容器が開封される。夏頃には本格的な解析作業が始まり、生命の起源や太陽系の成り立ちの謎を解明する研究成果が期待されている。

世界を驚かせた小惑星探査を成功させた「はやぶさ2」には、実は「地球防衛」という知られざる裏ミッションが存在していた。『ドキュメント 「はやぶさ2」の大冒険』で2195日にわたり密着取材したNHKリュウグウ着陸取材班がその謎のミッションに肉薄した。

裏のミッション「地球を守れ」 

はやぶさ2に課せられた裏ミッションとは、隕石から地球を守ることだ。

私たちはあまり意識することはないが、地球には毎日どこかで隕石が落下している。大部分は小さなものだが、まれに大きな被害をもたらすものがある。最近では、2013年2月にロシア中部のチェリャビンスク州に落ちた隕石が有名だ。

隕石が火球となって空を横切る様や爆風でガラスが割れる様子を捉えた車載カメラや防犯カメラの映像がテレビニュースで放送された。その衝撃に驚いた方も多いだろう。NASAの推定では直径17m、重さ1万tの小惑星が秒速18kmで大気圏に突入したとされている。割れたガラスなどで1500人以上がけがをした。

2013年2月にロシア・チェリャビンスク州での隕石による被害(左・中、窓ガラスの割れた学校・体育館)と、落下した隕石の標本(右) photos by gettyimages

たった10m程度の小惑星でもきわめて速いスピードで衝突すると、衝撃は大きくなる。幸い荒野に落ちたので、直接的な落下の被害は報告されていないが、これがもし都市部に落下していたら、甚大な被害となっていただろう。

この100年間で、チェリャビンスクの隕石と同程度かそれ以上の大きさの隕石は合計9回落下している。海に落下したものも考慮すると30回は起きていると推定される。

つまり3.3年に1回、直径10m以上の小惑星が地球に衝突している計算だ。

ちなみに約6600万年前に恐竜が絶滅したのは、直径約10kmの小惑星が地球に衝突したのが原因との説が有力視されている。このクラスの小惑星が地球に衝突する頻度は数千万から1億年に1度とされているが、油断は禁物だ。隕石(小惑星)の衝突は、珍しいことでは決してない。そして、人類もいつ、その危機に立たされるかわからないのだ。

こうした天体の衝突から地球を守る活動は「スペースガード」とか「プラネタリー・ディフェンス」などと呼ばれている。はやぶさ2のミッションマネージャ吉川真はこの分野の第一人者でもある。吉川はチェリャビンスクでの現地調査も行っている。

【写真】吉川真さん吉川真 はやぶさ2・ミッションマネージャ photo by JAXA

では、なぜ、はやぶさ2がこうしたスペースガードの分野でも成果が期待されているのか。

スペースガードでは地球が太陽に最も近づく近日点が1.3天文単位以下の小惑星や彗星を「NEO(Near Earth Object)」、日本語で「地球接近天体」などと呼んでいる。

さらにNEOのうち、近い将来地球衝突を警戒する小惑星を「PHA(Potentially Hazardous Asteroid)」「潜在的に危険な小惑星」と呼んでいる。PHAは地球軌道と小惑星軌道の間の最短距離が0.05天文単位以下、明るさが22等未満、大きさが100m以上の小惑星として定義される。

現在、NEOは1万5000個以上、PHAは1700個あまりあり、監視対象になっている。そして、リュウグウもそのPHAのひとつなのだ。つまり、リュウグウもいつか、何かのきっかけで、地球にぶつかってくるかもしれないのだ。もうひとつ付け加えると、初号機が行った小惑星イトカワもこのPHAになる。