『鬼滅の刃』の竈門禰豆子は、なぜ〈竹〉をくわえているのか?

歴史的大ヒット作の知っておきたい一面
畑中 章宏 プロフィール

〈竹〉は木でも草でもない

〈竹〉の特性に話を戻すと、竹は植物として中間的で、境界的であることも強調しておく必要がある。「タケ」は分類上イネ科に属するが、木ではなく、かといって草でもない、分類概念をはみ出した特異な植物なのである。

この境界性は、鬼と人間の中間に位置する禰豆子の属性とぴったりとあてはまる。鬼舞辻無惨の血を浴び「鬼化」しつつも、人間性を保ち続ける禰豆子は、まさに〈竹〉のようにマージナルだといえるだろう。

くわえていた〈竹〉を口からはずし、人間の言葉で再び話し始めたとき、禰豆子は人間に戻ったとみなされる。植物としてのタケは花が咲くことは極めてまれで、一部のタケ類は周期的に開花し、一斉に枯れるという。その周期は極めて長く、ハチクやマダケの場合、約120年周期だと推定されている。

人間から鬼へ、鬼から人間へという禰豆子の“変化”は、鬼の創始者たる鬼舞辻無惨をも驚嘆させた。『鬼滅』の禰豆子は、〈竹〉のように霊的で、強靭で、中間的で、稀に見る存在なのである。

 
【参考文献】
大阪人権歴史資料館編『竹の民俗誌――列島文化の深層を掘る』大阪人権歴史資料館、1990年
沖浦和光『竹の民俗誌――日本文化の源流を探る』岩波新書、1991年
保立道久『かぐや姫と王権神話――『竹取物語』・天皇・火山神話』洋泉社新書、2010年

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