2020.12.17
# 恐竜

恐竜は過酷な“山越え”をしていた! ジュラ紀に存在した巨大山脈とは?

ティラノサウルス徹底研究 第8回
小林 快次, MOVE編集部 プロフィール

実は従兄弟関係だった2種のストケソサウルス

話を2013年の論文「ヨーロッパと北米から発見されているジュラ期後期の獣脚類ティラノサウルス上科の分類」に戻しましょう。

なぜストケソサウルス兄弟はアメリカとイギリスに生き別れて暮らしていたのか。その答えは、両者は兄弟ではなく他人であったということになります。そのためイギリスのストケソサウルスには「ジュラティラント」という新しい名前が付けられました。

【図】ストケソサウルスとジュラティラント

だからといって、この兄と弟がまったく無関係かというと、そうではありません。いわば従兄弟のような関係で、ストケソサウルスとジュラティラント、そしてもう1つの二軍メンバー、エオティラヌスが同じ家系に属していることが明らかになりました。

しかも、同じ家系の3つの恐竜のうち、同じイギリスのジュラティラントとエオティラヌスがより近い関係だということもわかりました。この家系はのちに、「ストケソサウルス科」と呼ばれるようになります。

おまけに、ヨーロッパに棲んでいたティラノ軍団の二軍は、ジュラティラントとエオティラヌスの2種だけではありません。アビアティラニスという恐竜がポルトガルに棲んでいたことが、この論文でも紹介されています。

【図】アビアティラニス

アビアティラニスがティラノ軍団のメンバーかどうかははっきりしていません。見つかっている化石が腰の骨(腸骨と座骨)だけであり、一軍でないことだけは確定的なものの、ティラノ軍団のどこに属すべきか判然としないためです。

しかしここでは、このアビアティラヌスは二軍に属する種であると仮定します。そうなると、ここまでの二軍メンバーは次の通りになります。

 ディロング(中国東北部)(白亜紀前期バレミアン期)
 ユティラヌス(中国北東部)(白亜紀前期バレミアン期)
 シオングアンロング(中国西部)(白亜紀前期アルビアン期)
 ラプトレックス(中国北西部? モンゴル?)(白亜紀前期バレミアン期からアプチアン期)
 ドリプトサウルス(アメリカ東部)(白亜紀後期マーストリヒチアン期)
 アパラチオサウルス(アメリカ東部)(白亜紀後期カンパニアン期)
 ストケソサウルス(アメリカ西部)(ジュラ紀後期ティソニアン期)
 ジュラティラント(イギリス)(ジュラ紀後期ティソニアン期)
 エオティラヌス(イギリス)(白亜紀前期バレミアン期)
 アビアティラニス(ポルトガル)(ジュラ紀後期キンメリジアン期)

なお、のちの論文ではストケソサウルス科にストケソサウルス、ジュラティラント、エオティラヌスがふくまれるとされています。アビアティラニスとこれまで紹介されていないタニコラグレウス(アメリカ西部/ジュラ紀後期ティソニアン期)もこの科にふくまれる可能性がしめされました。

* * *

次回『恐竜は越冬できたのか?地球の果てで発見された、小さなティラノサウルス』

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