タダほど高いものはない?ネットサービス無料の「気持ち悪い」カラクリ

プライバシーが差し出されている!?
宇田川 敦史 プロフィール

検索連動型広告では、検索キーワードというユーザー行動が直接広告に反映されていたが、ディスプレイネットワークではそれが間接化され、一度蓄積したユーザー行動を別のタイミング、別の場所で広告に反映させている。いずれもユーザーの行動履歴をもとに広告の内容を決めていることから、これらは「行動ターゲティング広告」と総称される。

 

このタイプの広告は見かける機会が多くなる一方で、どこでどんなデータが使われているのかわからない「気持ち悪さ」を感じる人も多いのではないだろうか。

「個人情報は販売しない」の意味

「行動ターゲティング広告」が可能となるのは、Googleに代表されるプラットフォームが、ユーザーを「アカウント」と紐づけて識別しているからだ。そしてそのアカウントに蓄積された過去の行動履歴によって、ユーザーの属性や趣向を推測し、購入確率の高い広告を選択的に表示することができるからだ。

ユーザーから見れば、その精度の高さこそ、「気持ち悪さ」につながる。自分のことを誰がどこまで知っているのかわからなくなり、個人情報がどこかで悪用されているのではないか、という不安を惹起するからである。しかしプラットフォームの言い分は巧妙だ。彼らは揃って「個人情報を他社に販売することはありません」と宣言する。

その理屈はこうだ。彼らは広告主や、広告枠をもつ提携企業に対して、アカウントの氏名やメールアドレスを伝えているわけではない。あくまで、Cookieを共通化することで、広告主と広告枠を結びつけているだけだと。

「世界中の情報」が含意するもの

Google は、自社の使命「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること」と宣言している。Googleの集める「世界中の情報」には実は2種類あると考えるべきだ。ひとつは、Webページに代表される、文字や画像、動画、地図などの対象物(オブジェクト)のデータ化だ。そしてもうひとつは、私たち個人個人の属性や趣向、行動履歴など主体(サブジェクト)のデータ化である。

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Googleは、オブジェクトとサブジェクトの2種類のデータベースを、アルゴリズムによって結びつけるプラットフォームなのだ。私たちは、世界中のどこかにあるオブジェクトに自由にアクセスしたい。その時の必要に応じて必要な知識を得たいし、その時の気分に応じて楽しめるコンテンツを見たい。Googleはそれを非常に高い精度でかなえてくれる。しかも無料で。

その時Googleが得ているのが、私たちの行動履歴である。私たちは自らの行動や反応のひとつひとつをデータ化し、特定の一企業のデータベースに保存し、その管理を委託してしまっている。そして彼らはそのデータベースをアルゴリズムで処理し、お金に変えている。私たちは、自分の欲するオブジェクトにアクセスするための費用を支払う代わりに、自らの行動履歴やプライバシーを支払っているのだ。

つまるところプラットフォームの経済的な目的は、私たちの行動履歴(サブジェクト)と商品(オブジェクト)を結びつけてお金に変えることである。そのように考えると、Googleのようなプラットフォーム企業が、サービスを無料で提供し続ける理由が見えてくる。しかし一方で、それを理由にGoogleのような企業を批判したり、広告というビジネスモデル自体を否定するのは無理がある。資本主義社会において企業活動を行う以上、何らかの収益を継続的に上げていなければ持続可能ではないからだ。

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