落語界の異端児…注目の女流落語家は「日系ブラジル人3世」

その名は「落語家らむ音」

いま注目の新人落語家がいる。その名は「落語家らむ音(ね)」(27)。いわゆる屋号(亭号)を持たないフリーランスの落語家だ。その理由は本文で触れるが、落語界初の日系ブラジル人3世の落語家である。幼い頃は日本語が話せなかったという彼女が、なぜ落語家になったのか。これから落語で何をしようとしているのか。じっくりと話を聞いたーー。

得意噺は「3ヵ国語寿限無」 

このところ、いわゆる古典芸能が人気である。

歌舞伎役者はドラマやバラエティ番組に引っ張りダコだし、気鋭の講談師・神田松之丞改め六代目神田伯山の登場で、長らく日陰の存在だった講談にも注目が集まっている。

そして、落語は、と言えば、「やっぱり志ん生に限るねぇ」なんていう往年のファンと共存する形で、若年層のライトなファンが確実に増えつつある。

落語家たちの業と愛憎を描いたマンガ『昭和元禄落語心中』(原作:雲田はるこ)は、累計200万部を超える大ヒットを飛ばし、アニメやドラマにもなった。また、気軽な落語会やYoutubeなどで初心者向けのコンテンツが充実してきたこともあって、寄席に通う若い客も目に見えて増えてきた……というところで、このコロナ騒動である。

「たしかに大変ですけど、なんとか2ヵ月に1回は独演会ができるようにがんばってます」

そう話すのは、落語家の「らむ音」さんだ。

 

弟子入りしてから3年、初高座からはまだ2年半というが、腕前はなかなかのもの。

取材したこの日は、お江戸日本橋亭で「転失気(てんしき)」「徂徠(そらい)豆腐」という2本の古典落語を堂々と話しきった。

そのほか、人情噺の「浜野矩随(のりゆき)」や怪談「死神」なども持ちネタとする。だが、もっとも彼女らしい一席といえば、おそらく「3ヵ国語寿限無」だろう。なんと日本語、英語、ポルトガル語を駆使して、例の“ポンポコピーのポンポコナー”をやるのである。

留学で身につけた英語に加えて、日本語とポルトガル語を自在に操る。というのも彼女、落語界で唯一、日系ブラジル人3世の噺家なのだ。

「生まれは日本です。でも、家では(日系2世の)両親がポルトガル語を話していたので、5歳までは、日本語がほとんど話せませんでした。いまはこうやって普通に日本語を話していますが、実はいまでも日本語には苦手意識があるんです。とくに古典落語は言葉遣いも難しいですし、本当に毎日が勉強です」

日本語が苦手と話す落語家も珍しい。