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殺害した女性の頭皮を剥ぎ、頭にかぶる…名古屋「愛人切り裂き事件」犯人の異様な行動

「悪鬼も顔を背ける残虐な殺害行為」

江戸川乱歩の小説『盲獣』をご存知だろうか。この作品の終盤には、切り取られた人体の一部がもてあそばれる描写があり、その過激さが発表当時から大きな話題となった。

この小説が雑誌で連載されていた1932年2月、東京朝日新聞の片隅に、どことなく作品を想起させるような、現実に起きた衝撃的なバラバラ殺人を報じる以下の記事が掲載された。

〈八日午後五時頃名古屋市中區(…)にある鶏ふん小屋に年齢二十二、三位の女が惨殺されてゐるのを付近のものが発見(…)死體は首と両足を切断し悪鬼も顔を背ける残虐な殺害行為が行われていた〉

「鶏ふん小屋」とは農家で用いる納屋のこと。「首と両足を切断」とあるが、実際には、乳房、ヘソ、陰部も切り取られていたという。

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事件が起きた時期の日本は、きわめて不安的な状況にあった。1929年からは大恐慌が始まっており、1931年には満州事変が起きた。事件の直前には上海事変が、直後には五・一五事件が起きている。

この時期には、上記の事件のほかにも多くのバラバラ殺人や一家惨殺事件が起きており(名古屋一家殺し、東京玉の井の殺人など)、不安定な世相と犯罪行為が共振しているようにも見える。江戸川乱歩の作品にも、そうした社会の空気が凝集したのかもしれない。

そしてこの名古屋のバラバラ殺人事件も、やはりそうした不安定な時代を映すかのような、凄惨な実態を徐々に明らかにしていった。