このように、どの制度も一長一短で正解を決めることはできないが、一般的には排出権取引の導入段階ではグランドファザリング方式を、それが浸透してCO2の削減がある程度進んだ段階(オークションによるコストが法外なものとなる懸念が薄れた段階)からオークション方式へと切り替えていくことが多いようだ。
現在、環境先進国である欧州ではオークション方式による排出権の売買も盛んに行われており、EU-ETSという欧州の排出権取引システムでの排出権価格は高騰を見せており、出来高もそれなりに安定しているようである。
価格の高騰は、それだけの実需があるということと、そのコストの高さから削減へのインセンティブが働きやすいということを表し、制度面・実効面の双方で排出権取引が機能しているといっていい。実際に、欧州の主要銘柄で構成されるSTOXX600指数の構成銘柄のCO2排出量の推移を見ると、年々減少を続けていることが分かる。
無論、近年の減少はコロナ禍による景気後退の影響もあるが、これから方法を検討する段階の日本と比べれば、状況は天と地ほどの開きがあることが理解できるだろう。