しかし、海外の事例、特に環境先進地域の欧州のケースを詳細に見ると、必ずしもCO2対策がコストだけではなく、企業の相対的な成長性の強さに無関係ともいえないことが分かってきた。
今回は、今日本で機運が高まっているこの温室効果(CO2関連)への対策について、すでに広く普及している欧州のシステムを軸に株式投資への影響を概観してみたい。議論の主眼に置くのは、「排出権取引」の概念である。
まず背景を理解するために、地球温暖化対策、そしてCO2削減への熱がどのように高まってきたのか、その歴史の大枠について見てみたい。
最初の大きなイベントは、何といっても1992年の国連気候変動枠組条約、通称UNFCCCの採択だ。これにより、大気中の温室効果ガスの濃度の安定化させるための基本的な方向性が決まったといえる。
そして、この条約に基づいて、1995年から毎年COP(気候変動枠組条約締約国会議)が開催されることにもなった。その後、1997年に先進国への拘束力のある削減目標(2020年まで)を規定した「京都議定書」の合意に至り、具体的なCO2削減へと舵を切ったことは、日本主導のこととして覚えている人も多いだろう。
そこからは、2009年のコペンハーゲン合意で途上国の扱いへの提言、2013年のワルシャワ決定で2020年以降の削減目標作成への指針、2015年にパリ協定として「2020年以降の枠組みとして全ての国が参加する制度」の合意に至り、新たなステージに上がることになる。
2017年には、米国がトランプ大統領主導でパリ協定を脱退する混乱もあったが、基本的にはその一連の流れの中で、欧州はグリーンディール政策、そして日本は今回の菅首相の提言によって、「2050年までにカーボン・ニュートラル(実質ゼロ)」という共通の目標に至ることになる。
しかし、日本と欧州は目標こそ同じでも、実態や進捗度合いは大きく異なる。