<どこからああいう発想は出てくるのか?>
<ひらめきは魔法のようにやってきます>
<創造をするときに、あなたにとって最も大切なことは何ですか?>
<朝ご飯です>
デザイナー・石岡瑛子の言葉である。
ジャーナリストなどから取材を受けると、必ず一度は出てくるという問いに対し、石岡さんはいつも上記のように答えていたという。それは石岡さんの著書『私デザイン』(講談社/2005年刊行)の「あとがき」にも書かれている。私は、この本のアシスタント編集者として、石岡さんに出会った。
当時、石岡さんは、ニューヨークを拠点に、世界中のプロジェクトを常時、複数かけもちしている状態で、その合間を縫って書かれた美しい手書きの原稿は、あるときはベルリンから、あるときはアムステルダムから、あるときはニューヨークのオフィスから送られてきた。
私が石岡さんを知ったのは、1993年、フランシス・フォード・コッポラ監督の映画『ドラキュラ』で、第65回アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞されたときだったと記憶している。この仕事で石岡さんは、コッポラ監督から、“Never seen before(今まで見たことのない)”表現を求められたと語っている。若きキアヌ・リーブスやウィノナ・ライダーが出演し、日本でもヒットした映画で石岡さんが創り上げた官能的なドラキュラは、まさに、見たことのない、しかし一度見たら忘れられないドラキュラだった。
Original(誰にも真似できない)、Revolutionary(革命的な)、Timeless(時代を超える)。この3つが、石岡さんのデザインの合言葉だった。