思春期の女子はとてもナイーブ。症状が現れることも

ここまでの説明を読むと、「やはり副反応が心配……」と感じてしまった保護者も多いかもしれない。しかし、峯さんのクリニックでは、この7年間で、HPVワクチンによる重篤な症状は1つも起きていない。ただ、前述のように思春期の女の子には、心理的な影響からさまざまな症状が起こることがあるだけに、周囲の十分な理解やケアが必要だと峯さんは訴える。

思春期の女の子は心理的な不安が表に出やすい、と言った特性があるという。photo/Getty Images

「そもそも思春期に多いのですが、病気や怪我などの明らかな原因は見つからないのに、体が痛い、ご飯が食べられない、友達と話せなくなってしまうなどの症状は、よく見られる症状です。しかも訴えの7割は女の子ワクチンを打った子にも、打たない子にも、同じように見られます。このことは、HPVワクチンと接種後に現れたさまざまな症状の因果関係解明のために行われた調査『名古屋スタディ』(名古屋市の女子7万人を対象としてアンケート調査を行い、約3万人のデータを解析【子宮頸がん予防接種調査回答集計結果 平成28年6月名古屋市】)でもレポートされ、結論が出ています。

例えば、Aさんが部活でエースを務めているとか、大事な受験を控えているとしましょう。良い成績が残せなかったとしたら、みんなに迷惑をかけたと非常につらい思いをします。真面目で必死に頑張って、いろいろなものを背負っているお子さんは、つらさをうまく表現できないために、“あのことさえなければ”という気持ちを、体の痛みや不調を訴えることで表現することがあるのです。

このような状況が、たまたまワクチンを打った後のAさんに、そういう症状として出ることもあり得ます。誤解しないでほしいのですが、これは仮病ではなく、つらさをわかってもらいたくて、わかりやすい症状に変わって表に出てしまうのです

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HPVワクチンではなく、他の予防接種での出来事だが、視力検査では異常がないのに、一時的に目が見えなくなった女の子がいたが、心理的な負担を取り除くともとに戻ったという。

「こういったケースは検査をしたら何でもないことが多いんです。それでも医師は“何でもないよと”、突き放してはいけないと思います。必死で頑張っているけれどできないということを、受け止めてあげないと、トラウマがまた生まれて新たな症状が生まれて…という悪循環になることもあります」

こういった心理負担を減らすために、峯小児科では、不安が強い子どもには、ソファやベッドで予防接種を行うこともある。さらに、注射部位を冷たく冷やして痛みを感じにくくしたり、美容医療で使用されるかなり細いタイプの特別な針を導入し、極力痛みを減らすような工夫も取り入れている。

「HPVワクチンは筋肉注射なので、一般的な注射よりも少し痛く痛みの質が違うのは事実です。接種後も、通常なら2日程度で痛みが引くところですが、1週間ぐらい痛みが続くこともあります。ですから、現場としてもできるだけの配慮をすることを心がけています」

20年も前から非常勤の臨床心理士を2名置いているのも、心のケアに重きを置いているためだ。

「年齢が大きくなって、心の悩みがある場合、メンタルクリニックを勧められることがあると思います。しかし、全く知らない先生にいきなり悩みを話すというのは、ハードルが高いこともあります。小さいころから通い慣れていて、泣きわめいてもスタッフみんなが優しくしてくれた病院で、相談できたらいいですよね」