2021.01.03
# 経営者

会社のピンチをチャンスに変えた「大成ロテック」3つの意識改革

大成ロテック、西田義則社長に聞く
大塚 英樹 プロフィール

さらに、西田は組織改革を断行。製品事業・営業・工事・管理の4本部体制に再編、本部長の権限と責任を明確化したのだ。そして、全社に「挑戦する企業風土」の醸成を図っている。

胆力はにわかにつけられるものではい。常にその有無が試され続けている。現に西田は、大成建設時代から、上司に対しても正しいと思うことを臆せずに主張してきた。
39歳のある折。技術開発第二部シールド工法開発室課長としてシールドマシンの開発に取り組んでいると、上司の部長が突然、「共同開発企業をA社から他社に替えろ」と言い始めた。

当時、大成建設はA社と共同で画期的な球体シールド工法を開発していた。西田は納得できず、部長に繰り返し理由を聞くが、「A社との契約は解除する」としか言わない。

そこで西田は、白黒をはっきりさせるため、部長とその上司の部門長を訪ね、「A社との契約は続行すべきです」と諫言した。すると、部門長は、「上司と部下が喧嘩をしたら部下が悪いに決まっている」と言い放った。それ以来、西田は冷遇されたが、あきらめず、仕事に集中した。

 

「道路確保」の緊急依頼、原発事故で陣頭指揮

もう1つは、2011年3月11日の東日本大震災時に、福島第一原発事故の緊急対応の指揮を執った折のこと。東京支店土木部長だった西田は、東京電力から大成建設に入った「福島第一原発への道路確保」の緊急依頼に応諾し、直ちにプロジェクトチームを編成、陣頭指揮を執って現地入りした。

大成建設は福島第一原発の建設に関わっていなかったが、西田は「国家の大ピンチ。われわれがやらねば誰がやる」という使命感を持って、危険なため誰もやりたがらなかった福島第一原発周辺道路の啓開工事に不眠不休で取り組んだ。

道路は地震で損壊しているうえ、原子炉建屋、タービン建屋の爆発でガレキが散乱し、大型車が通行できる状況ではなかった。一刻も早く、復旧させなければ、冷却水を注入する消防車、自衛隊車が敷地内に入れない。時間との闘いだった。

西田は防護服を着て、工事の指揮を執った。そしてチームは一丸となって目に見えない放射線と戦いながら道路を確保するのだ。

こうした西田の困難に立ち向かう胆力が、現在推進する経営改革の基になっているのは間違いない。

西田 義則(にしだ・よしのり)
1955年、富山県生まれ。金沢大学工学部卒業後、1978年に大成建設に入社。主に地下鉄工事等シールド工法の現場を担当し、2012年に執行役員東京支店副支店長、2015年に常務執行役員土木本部副本部長を歴任。2016年に大成ロテック代表取締役社長に就任し、現在に至る。「役員は自ら汗をかくべき」と、課題解決のために自ら現場に出向くなど、「率先垂範」の経営を信条としている。

使命感と幸運思考、確信と覚悟の経営で企業を成功へ導く…「新・成功の法則」を解き明かした大塚英樹著『成長する企業トップの成功戦略を解明する ニューノーマル時代を乗り切る経営』(講談社ビーシー/講談社、2020年11月27日発売)に登場する経営者は下記の通り(肩書表記は、本書出版時のもの)。

越智仁・三菱ケミカルホールディングス社長、若林久・西武鉄道前社長、中山泰男・セコム社長(現会長)、永野 毅・東京海上ホールディングス社長(現会長)、尚山勝男・アサヒグループ食品社長、杉江俊彦・三越伊勢丹ホールディングス社長、服部一郎・アニモ会長、小山正彦・プリンスホテル社長、布施孝之・キリンビール社長、原典之・MS&ADホールディングス社長(三井住友海上社長)、塩澤賢一・アサヒビール社長、中田誠司・大和証券グループ本社社長、車谷暢昭・東芝会長CEO(現社長CEO)、芳井敬一・大和ハウス工業社長、金川千尋・信越化学工業会長、西田義則・大成ロテック社長、中内功・旧ダイエー創業者

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大塚 英樹(おおつか・ひでき)
1950年、兵庫県に生まれる。ジャーナリスト。テレビディレクター、ニューヨークの雑誌スタッフライターを経て、1983年に独立し、新聞、週刊誌、月刊誌で精力的に執筆。逃亡中のグエン・カオ・キ元南ベトナム副大統領など、数々のスクープ・インタビューをものにする。現在は国際経済をはじめとして、政治・社会問題など幅広い分野で活躍。これまで1000人以上の経営者にインタビュー。ダイエーの創業者・中内功には1983年の出会いから、逝去まで密着取材を続けた。
著書には『流通王─中内功とは何者だったのか』『柳井正 未来の歩き方』『作らずに創れ! イノベーションを背負った男、リコー会長・近藤史朗』『会社の命運はトップの胆力で決まる』(以上、講談社)、『続く会社、続かない会社はNo.2で決まる』(講談社+α新書)、『「使命感」が人を動かす─成功するトップの絶対条件』(集英社インターナショナル)、『社長の危機突破法』『確信と覚悟の経営』(以上、さくら舎)などがある。

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