なぜ中国人留学生は、日本人から「中国の歴史」を学ぶのか

ケンカをしながら語り合えるのが中国
天児 慧, 鶴間 和幸 プロフィール

天児 私は早稲田で16年間、中国の国際関係と内政についての講義をもっていましたが、じつは受講する学生の圧倒的多数が中国人留学生でした。つまり、中国人が日本人の私から中国の内政や国際関係について学ぶ。

これはなぜだろうと学生たちにたずねると、リアリティのある本当の中国を知りたい、それを実感したいからだというんです。それには中国よりも日本のほうが適えられるというわけですが、リアリティのある本当の中国を知りたいというのは、われわれ日本人も同じです。

ですから、学問の世界ではそうした相互作用のなかで日本と中国の交流が育っているんですね。

鶴間 私の学習院大学でも中国からの留学生が非常に増えていますが、私も最初、どうして彼らは日本に来て中国史を勉強するのだろうと思いました。

でも、考えてみれば学問に国境はありませんし、私たちがもっている遺産としての中国史研究を中国の若者が学んで、次の中国史研究に移ってもいいじゃないかと思うようになりました。

日本人だ、中国人だというのではなく、双方がおたがいに共有する歴史を学ぶ。国境のない学問の世界だからこそ、熱心な両国の若者に期待したいですね

(構成・文 武内孝夫)

台湾で刊行された繁体字版は、「中国・歴史的長河」のシリーズ名で全12巻が刊行された。本文は縦組み。発行=台湾商務印書館
あまこ・さとし/1947年、岡山県生まれ。専門は政治学、現代中国論。青山学院大学国際政治経済学部教授、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授、アジア政経学会理事長等を務め、現在、早稲田大学名誉教授。著書に、『中華人民共和国史』(岩波新書)、『「中国共産党」論』(NHK出版新書)、『日本再生の戦略』(講談社現代新書)、『日中対立』(ちくま新書)ほか多数。「中国の歴史」では第11巻『巨龍の胎動』を執筆。
つるま・かずゆき/1950年、東京都生まれ。専門は中国古代史。茨城大学教授を経て、現在、学習院大学文学部教授。著書に『秦漢帝国へのアプローチ』(山川出版社)、『人間・始皇帝』(岩波新書)、『始皇帝の地下帝国』(講談社)などがあるほか、多くの展覧会やテレビドキュメンタリー、近年では映画「キングダム」や、テレビドラマ「コウラン伝 始皇帝の母」の歴史監修を担当。「中国の歴史」編集委員の一人で、第3巻『ファーストエンペラーの遺産』を執筆。
講談社学術文庫版 中国の歴史 全12巻
編集委員=礪波護 尾形勇 鶴間和幸 上田信
1『神話から歴史へ―神話時代・夏王朝』宮本一夫 10月刊1350円
2『都市国家から中華へ―殷周・春秋戦国』平㔟隆郎 10月刊1550円
3『ファーストエンペラーの遺産―秦漢帝国』鶴間和幸 11月刊1600円
4『三国志の世界―後漢・三国時代』金文京    11月刊1300円
5『中華の崩壊と拡大―魏晋南北朝』川本芳昭 12月刊1300円
6『絢爛たる世界帝国―隋唐時代』氣賀澤保規 12月刊1350円
7『中国思想と宗教の奔流―宋朝』小島毅    2021年1月刊
8『疾駆する草原の征服者―遼・西夏・金・元』杉山正明 2月刊
9『海と帝国―明清時代』上田信 3月刊
10『ラストエンペラーと近代中国―清末・中華民国』菊池秀明 4月刊
11『巨龍の胎動―毛沢東vs.鄧小平』天児慧 5月刊
12『日本にとって中国とは何か』尾形勇・鶴間和幸・上田信・葛剣雄・王勇・礪波護 6月刊