天児 私は早稲田で16年間、中国の国際関係と内政についての講義をもっていましたが、じつは受講する学生の圧倒的多数が中国人留学生でした。つまり、中国人が日本人の私から中国の内政や国際関係について学ぶ。
これはなぜだろうと学生たちにたずねると、リアリティのある本当の中国を知りたい、それを実感したいからだというんです。それには中国よりも日本のほうが適えられるというわけですが、リアリティのある本当の中国を知りたいというのは、われわれ日本人も同じです。
ですから、学問の世界ではそうした相互作用のなかで日本と中国の交流が育っているんですね。
鶴間 私の学習院大学でも中国からの留学生が非常に増えていますが、私も最初、どうして彼らは日本に来て中国史を勉強するのだろうと思いました。
でも、考えてみれば学問に国境はありませんし、私たちがもっている遺産としての中国史研究を中国の若者が学んで、次の中国史研究に移ってもいいじゃないかと思うようになりました。
日本人だ、中国人だというのではなく、双方がおたがいに共有する歴史を学ぶ。国境のない学問の世界だからこそ、熱心な両国の若者に期待したいですね。
(構成・文 武内孝夫)