事件前、ドアン・ティ・フォン(左)とシティ・アイシャ(右)がフェイスブックに投稿した自撮り写真

金正男暗殺の「実行犯」が、いよいよ語り始めた「真相」

本当に「イタズラ」だと信じ込んでいたのか

「真相」は、忘れたころに、語られる。

世界を揺るがした暗殺事件の謎に切り込む映画「わたしは金正男を殺してない」が、今年10月から日本各地の映画館で公開された。初めて公になる音声記録や文書を詰め込んだ本作の魅力は、その資料的な価値の高さだけにとどまらない。映像を見れば見るほど、実行犯に仕立てられた女性2人の転落劇が、他人事とは思えなくなってくるのだ。

事件直前、空港の出発ホームを歩く金正男(右の丸)と、それを柱の陰から確認していたシティ・アイシャ(左の丸)
 

事件は2017年2月13日午前9時前、マレーシアのクアラルンプール国際空港で起きた。

出発ホールを歩く金正男の顔に、女性2人が猛毒VX入りの液体を塗りつけた。金正男は救命処置を受けたが、激しくけいれんして2時間後に死亡。地元警察は監視カメラの分析などから数日後に女性2人を逮捕したが、指示役の北朝鮮工作員たちは既に出国済みで逮捕できなかった。

本作の撮影チームは、罪をかぶることになった女性2人の裁判に焦点を当て、記録を掘り起こしていった。

事件直後、空港の診療所で意識を失った金正男