約2年をかけて貧乏旅をしながら、ほぼ世界一周した様子を綴ったエッセイ『ブラを捨て旅に出よう』の著者・歩りえこさんが、世界各地で出会った思い出深い男性とのエピソードを綴っているFRaU web連載「世界94カ国で出会った男たち」(毎月2回更新)。

今回は、「ブルネイ・ダルサラーム国」での出会いにクローズアップ。ブルネイは日本の三重県とほぼ同じ面積の小さな国ですが、「世界一豊かな国」と称されるお金持ち国家。そんな国で、どのような出会いがあったのでしょうか?

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世界トップレベルの豊かさを持つ国

ブルネイ・ダルサラーム国は東南アジアに位置する、ジャングルに囲まれたとても小さな国だ。日本人にはあまり馴染みはないけれど、豊富な石油資源があることから世界的にトップレベルの豊かさを持つ国として知られている

未知の国への期待に胸を膨らませながら、まずはマレーシアのクアラルンプールへと降り立った。トランジットで半日だけクアラルンプールに滞在し、いざブルネイ・ダルサラームの首都であるバンダリスリブガワンへ向かう機内に乗り込む。

ブルネイ・ダルサラーム国という国名も長いが、首都名もやたらと長くてとても暗記できそうにない。本当は「ロイヤルブルネイ」というブルネイ国王も乗るレアな航空会社を利用したかったが、値段が高いので諦めてマレーシア航空を利用することになった。

ジャングルリバークルーズでブルネイの雄大な自然を満喫!ワニも生息しています。写真提供/歩りえこ

ブルネイ行きの搭乗を待つ間に、クアラルンプールの空港内で写真を撮ろうと周りを見渡すと……人相の良さそうな赤いポロシャツを着た青年と目が合った。「すいません、シャッターを押して頂けませんか?」と英語で聞くと、ポロシャツの青年は快く笑顔でシャッターを押してくれた。とても感じの良い青年だ。この搭乗ゲート付近にいるってことは……ブルネイ人だろうか?

外見は日本人や中国人、韓国人といった雰囲気に近く、東南アジア系という顔つきではない。もしかして私と同じ一人旅で、ブルネイに向かう外国人なのだろうか? それとも在住? だとしたら心強い。ブルネイについて詳しいかもしれないし、チャンスがあれば少し話をしてみたい。しかし、すぐに搭乗が始まり……話しかけるタイミングを失ってしまった。

しばらくして機内でコックリと眠っていると、肩をトントンと叩かれて目が覚めた。寝ぼけながら顔を上げると、先ほどの赤いポロシャツ青年が笑顔で立っている。「さっき君に話しかけたかったけど、タイミングが悪くて……君は一人でブルネイに行くのかい?僕はブルネイ在住だから現地の情報を色々教えてあげるよ

青年はたまたま空いていた私の座席の横に座ると、ガイドブックの地図を指差しながら丁寧に解説し始めた。やっぱり人相通りのとても親切な青年のようだ。

日本で買ったブルネイのガイドブックはマレーシア情報のついでにオマケ程度に載っているくらいでお世辞にも詳しく書いてあるとは言い難い。「そういえば、どこに泊まるの?もうホテルは手配してある?」と聞かれ、私は少しバツが悪そうに『いつも着いてからユースホステルとか安宿を探すの』と、言うと青年は驚いて言った。「君は変わっているね。ブルネイには高級ホテルはあるけど、ユースホステルや安宿は聞いたことないな。もしかしたらあまりないかもね」

え……そうなの? 安宿がないなんて、さすがはリッチな国だ。「よかったら僕が友達と共同で暮らしているシェアハウスに泊まるかい?4~5人いて女性も住んでいるから安心して大丈夫だよ」

ブルネイでシェアハウス生活……なんだかものすごく楽しそうだ。なにより、青年の清潔感ある身なりと柔らかい話し方、スマホ画面で見せてくれたシェアハウス生活の写真を見て安心感を覚えた。

鮮やかな色彩が印象的なジャミアス ハスナル ボスキア モスク。市街地から少し離れたところにあるこのモスクは、国王即位25周年を記念して8年かけて造られた。写真提供/歩りえこ