46年間「ノグソ」を続けてわかった「うんこの重要性」

自然に還元可能な“正しいノグソ”とは?
飯田 一史 プロフィール

正しいノグソ講座――基本編

――というわけでうんこを自然界に還すことを伊沢さんが日々実践している伊沢さん所有の山林にやって参りました。どんなふうにするとマイナス面を最小化した上でほかの生きものに利用してもらえるノグソが可能なのでしょうか?

伊沢 ノグソと言うと「出しっぱなし」というイメージがあると思いますが、それだとたしかに汚らしいし不衛生です。

まず地面に軽く穴を掘り、出し終えたら土の中に埋めます。そして完全に分解されて無機養分になり、植物に吸収されて元の状態になるまでは枯れ枝で目印を立てて、同じ場所にするのは1年に1回。それは富栄養化(栄養分が自然の状態より増えすぎてしまうこと)などで環境に負荷を掛けないためです。

微生物の分解力はものすごくて、人間が摂取している薬や食品添加物のような化学物質も時間が経てば分解されます。

枯れ枝で立てられた目印の数々

湯澤 時間が必要なんですよね。下肥も「人糞を畑にそのまま撒く」と思っている人が少なくないのですが、かなりの時間をかけて腐熟させてから使う。

伊沢 ええ。きちんと分解されるには時間がかかります。でも臭いがなくなるだけなら、今年も夏から秋にかけて調査したのですが、最短8日。だいたい10日もすれば、うんこのかたちは残っていても腸内細菌や土中の菌類の働きで無臭になります。

「くさい」とか「病気の原因になる」「環境汚染になる」というのは結局、自然の処理能力以上に大量の屎尿を山や海に垂れ流すから起こることなんです。

 

湯澤 うんこにとって不幸だったのは人類の都市化ですね。人口集中によって土や海・川が吸収しきれない量の屎尿が放出されるようになり、問題化するようになった。

伊沢 以前、「あなた一人なら問題ないかもしれないけど、日本人全員が毎日ノグソするのは無理だろう」と批判されて計算したんですが、林の中で50センチ四方もスペースがあれば1回ノグソができます。つまり1メートル四方で4回。1年ではひとりあたり10メートル四方あれば足ります。

とすると日本の人口を1億2000万人とするなら12000万アール、つまり110キロ四方の林があればいい。そして日本の山林はこの20倍以上の面積があるんです。しかも貴重な自然が残っていたり、微生物が少なく分解能力が低い高山帯などはそのうち数%。半分近くは植林です。だから計算上は今でも日本人みんながノグソに移行することは可能なんですよ。

ただもちろん、東京みたいに人が集中していて近くに林がないところではできません。循環可能な社会にするためには人口を分散させて生活するべきなんです。「田舎に引っ越せ!」と私は言いたい(笑)。

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