2020年を代表するヒット曲は何か――。
その筆頭候補にあげられるのが「小説を音楽にするユニット」YOASOBIのデビュー曲「夜に駆ける」だろう。
YOASOBIとは、コンポーザーAyaseとボーカリストikuraによるクリエイターユニットだ。昨年11月に同曲がYouTubeに公開された段階では全く無名な存在だったが、ネットを通じて徐々に支持を拡大。テレビの情報番組でも取り上げられるようになり、5月下旬にはBillboard JAPAN総合ソング・チャート「JAPAN HOT 100」で総合1位を獲得した。
その後もロングヒットを続け、CDは未リリースながら同曲のストリーミング累計再生回数は2億回を突破、ミュージックビデオの再生回数は1億2千万回を突破(2020年11月末現在)というモンスター級の数字を叩き出している。
12月4日に発表されたBillboard JAPANの2020年年間チャートで同曲は、米津玄師やOfficial髭男dismやLiSAなど数々の人気アーティストをおさえて総合ソング・チャートで1位を獲得。まさに異例のブレイクを果たした形となる。
なぜYOASOBIはネット発の“現象”を巻き起こしたのか? 仕掛け人であるソニー・ミュージックエンタテインメントの屋代陽平氏、山本秀哉氏に取材を行い、2020年最大のヒット曲の裏側を解き明かす。
前編ではYOASOBIの誕生から、当事者も予想していなかったその反響を語ってもらった。
(取材・文:柴那典、写真:林直幸)
そもそもYOASOBIとはソニー・ミュージックエンタテインメントが運営する小説・イラスト投稿サイト「monogatary.com」から誕生したユニットだ。
プロジェクトの始まりは、2019年7月から9月にかけて「monogatary.com」上で行なわれていたコンテスト『モノコン2019』。その「ソニーミュージック賞」で大賞に輝いた物語を楽曲化するユニットとしてYOASOBIが結成された。
2017年10月にスタートした「monogatary.com」の企画を立ち上げ、サービス開始当初から運営に携わってきたのが屋代氏だ。そして、屋代氏と共にA&RとしてYOASOBIの音楽性をゼロから作り上げていったのが山本氏だった。