宇宙ステーションまでたった400キロなのに、ロケットが時速3万キロも出す理由

現役東大生のサイエンス入門
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静止軌道と低軌道

実は、ここであげた400kmや3万6000kmという高さは実際に使われている軌道です。高度400kmの軌道にはISSがあり、高度3万6000kmの軌道は静止軌道とよばれる軌道で気象衛星「ひまわり」などが回っています。

なぜ静止軌道と呼ぶのかというと、その軌道を回る衛星の速度が地球の自転速度と同じになるので、地球から見ると衛星が静止しているように見えるからなのです。地球上の特定の場所を常に観測したい場合にはこの軌道を使えば便利ですね!

一方で、低軌道にも利点があり、短時間で地球を一周できる(ISSは90分で地球を一周します)とか、地表に近いため高画質の観測画像が撮れるとか、通信にあまり時間がかからないなどがあります。

意外なことに、ISSは遠いように感じますが400kmというのは東京から大阪までの距離くらいなので、実際はかなり近いのですね。肉眼で見えることもよくあるので、その日にちをチェックしてぜひ夜空を眺めてみましょう。

「低軌道」と「静止軌道」の位置関係 Illustration by 3DSculptor/ Dedy Setyawan/iStock

地球を離れて月まで行くには

このようにロケットで打ち上げられた人工衛星・探査機はそれぞれの軌道にむけて進んでいくことになります。では、月に行くためにはどうしたらいいでしょうか。

一つの方法は地球周回軌道に入った探査機の速度を大きくすればいいのです。すると地球に引っ張られる力が小さくなるので、探査機は楕円の形で運動していくことになります。

この楕円がちょうど月の位置に到達するくらいの大きさの速度を探査機に与えることができれば、探査機は月にたどり着くことができます。また、地球の重力の影響から脱出できるくらい十分大きな速度を探査機に与えることで月に行くこともできます。

では、地球以外のほかの太陽系の惑星に行くためにはどうしたらいいでしょうか。このためには「ホーマン軌道」という最も効率の良い軌道や、惑星の重力に探査機が引っ張られることを利用して探査機の速度を大きくしたり小さくしたりする「スイングバイ」を利用して惑星を目指すことになります。

「はやぶさ」や「はやぶさ2」も地球の重力を利用したスイングバイを利用して加速することで、小惑星に向かいました。また「はやぶさ2」は今後の拡張ミッションとして小惑星「1998KY26」に向かうなかで、地球スイングバイを行う予定です。

今回はロケット推進の仕組みや探査機の軌道や速度について説明しました。宇宙開発は最初に紹介したように、今とても盛り上がっています。

また宇宙探査計画だけではなく、近年新たな宇宙ビジネスがたくさん生まれていたり、地球規模の課題解決を通じての持続可能な開発目標(SDGs : Sustainable Development Goals)への貢献が期待されていたり、「人類のために宇宙をいかに利用していくか」ということが活発に議論されるようになっています。ぜひ、これを機に宇宙についてより興味を持っていただけると幸いです。

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