宇宙ステーションまでたった400キロなのに、ロケットが時速3万キロも出す理由

現役東大生のサイエンス入門
東京大学CAST プロフィール

そもそも大きな速度が必要な理由は?

つぎに、大きな速度が必要な理由を説明しましょう。ロケットを打ち上げる目的はさまざまですが、そのうちの一つに人工衛星の地球周回軌道への投入があります。

垂直に打ち上げられたロケットは徐々に水平に向きを変え、衛星を軌道上に送ることになります。地球の周りを回るために必要な速度を衛星に与えるために、ロケットはそれに見合う速度まで加速しなければならないのです。探査機を送り出す場合も、宇宙航行に必要な速度を得るためにロケットはその分の加速を必要とします。

では、衛星にはどれくらいの速度が必要なのでしょうか。人工衛星が「低軌道」という高度400kmの軌道を回るためには秒速約7.7kmが必要になります。これは時速2万7700kmというとてつもない速さです。

【写真】夜間のロケット打ち上げFalcon 9 ロケットの打ち上げ後の軌跡 Photo by Chris Kridler / gettyimages

ではなぜ、速度が速くなると落下しないのでしょうか?

イメージとしては野球のボールを水平に投げることを想像してみてください。最初はまっすぐ進もうとしますが、徐々に地球の重力に引っ張られて地面に落ちていきますよね。このときボールは地球に引かれつつも、運動の状態を保とうとする「慣性」のために最初に投げた方向に進もうとしているのです。

ボールをもっと速く投げれば、より遠くに進んで地面に落ちるまでより時間がかかることからわかるように、最初に投げた方向により強く進もうとします。この最初に投げた方向に進もうとする勢いと地球に引っ張られる勢いがちょうどよいバランスのとき、ボールは地球を一周して円を描くのです。

そして、このちょうどよい速さというのが、高度400kmで秒速7.7kmになるのです。

ちなみに「別の高さではどうなのか」について軽く補足しておきましょう。ニュートンの発見した「万有引力の法則」によると、物と物の間にはその重さに比例して距離の2乗に反比例する引力(万有引力)が働きます。

そのため、高さが高くなるほど、地球の引力(重力)は小さくなります。ということは、高度が高いほどちょうど円形にまわるための速度は小さくなります。たとえば高度3万6000kmの軌道を回るためには、秒速約3.1kmの速度が必要になります。

関連記事