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2020.12.14
# 不良債権

「バブル」のしんがり 整理回収機構はいまなお不良債権を追い続ける

WOWOWドラマ化!「トッカイ」の奮闘

「公的資金を投入したというニュースが流れて、みんな、『えー』と声を上げましたよ。『なんだ! 俺たちの努力はこれで水の泡だ』『俺たちは二年間、必死になって策を尽くし、周囲を説得したのに、あれはなんのためだったのか』と。涙が出ました」

寺村信行は、都立日比谷高校から東京大学法学部、そして霞が関に君臨した旧大蔵省(その後、財務省と金融庁に分離)に進み、その本流を歩いたエリートである。大臣官房秘書課長、主計局次長の後、一九九四年六月末までの二年間、銀行局長を務め、二十七代目の国税庁長官に就いた。絵に描いたような官僚人生だったのである。

WOWOW開局30周年記念 連続ドラマW原作 2021年1月17日(日)夜10時放送 主演:伊藤英明
 

ほとんど知られていないが、彼は金融行政の失敗と官僚たちの混乱を示す逸話を残している。金融行政を引き継いだ後任の銀行局長や官房長のところに怒鳴り込み、住専処理と税金の投入を巡って、「君たちのやったことは大蔵省最大の汚点だ」と罵っていた。

元銀行局長が明かした大蔵省の失政

前任者が後任者の執務室に押しかけて叱責することなど、前代未聞のことである。彼の指摘はしかし、狷介な彼の性格を示す話として扱われたようで、後輩や経済記者たちには黙殺された。

一方でそれは、この『トッカイ』の物語の前章にあたる重要なエピソードにほかならない。第二章の「奪り駒たち」のなかで触れたが、寺村の言う大蔵省の失政や政治介入のために、住専社員やその母体の銀行員たちは過酷な回収に駆り出されている。そのときに監督官庁と官僚たちの間で何があり、銀行局長室でどんな会話が交わされたか──。

八十三歳になった寺村が二〇二〇年八月、その重い口を開いた。以下は、『トッカイ』文庫版の刊行にあたって、混迷の金融行政の中心にいた彼の、四半世紀ぶりの証言である。