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神田伯山の魅力は「現代と向き合っている」ことに尽きる…一体なぜか?

いま伝統芸能が驚くほどアツい
いま伝統芸能の世界がアツい! なぜおもしろいのか、どうおもしろいのか? 歌舞伎や落語、講談、浪曲、さらにはストリップまで、それぞれのシーンに新風を吹かせる若き革命児たちが台頭している。新刊『伝統芸能の革命児たち』著者の九龍ジョーさんに伝統芸能の魅力を聞いた。
『伝統芸能の革命児たち』著者の九龍ジョーさん(写真:長浜耕樹)

神田松之丞が神田伯山になるまで

――新刊『伝統芸能の革命児たち』では様々な芸能者たちが紹介されますが、その中でも主役の一人と言っていいのが神田伯山さんですよね。

ちょうど最初に書いた原稿が、2015年のゴールデンウィークに当時の松之丞さんを末廣亭の深夜寄席で見るところからはじまります。ある意味、この本は松之丞が伯山になるまでの、数年間の軌跡とも言えるかも。それは他の伝統芸能のジャンルにも言えて、これからの時代を担う30代40代が、大きな名前を襲名し、中核を担っていく。ちょうどそういう季節だったと思います。その象徴となる人物の一人が神田伯山であることは間違いない。

――九龍さんは伯山さんのYouTubeチャンネル「神田伯山ティービィー」を監修されていますよね。襲名披露興行を29日間撮影して、しかも翌日にはその様子を毎日アップした。一連の動画も含めて、チャンネルはYouTubeで初のギャラクシー賞を受賞しました。

 

最初は、襲名披露興行の記録映像を撮影して公開する、ぐらいの話だったんですね。ただ僕が声をかけたのが映像作家の岩淵弘樹監督で、彼はかつて、どついたるねんというバンドの動画をYouTubeに毎日一本投稿するっていう企画をやっていたので、打ち合わせで「彼なら、場合によっては毎日動画をアップできるかもしれませんよ」って冗談で言ったんです。そしたら、岩淵監督が即答で「やります!」って(笑)。

ここにもう一つ、楽屋をとりしきる若い二ツ目の落語家に撮影カメラを持たせようっていう伯山さんのアイディアも加わって、これも大きかった。外部の人間が撮影すると、どうしても芸人さんたちが外向けの顔になってしまう。でも、カメラを持ってるのが勝手知ったる芸人だと、普段通りの風景が撮れるんですよ。

――この楽屋の雰囲気がすごくいいんですよね。

寄席芸人の世界って面白いし、とくにベテランの芸人さんは素の状態がかっこいいんです。例えば小遊三師匠や圓楽師匠、好楽師匠なんかもいらっしゃるんですけど、テレビの「笑点」で見る姿とはまったく違う。シャレのめしてるし、ダンディーだし。あの映像を見て驚いた人は多かったと思います。

寄席のような豊かな空間って、伝統の積み重ねでできたもので、いまやお金を使って人為的に生み出そうとしても絶対に生み出せない。伯山さんの言葉を借りるなら、「ユートピア」。そうした空間が、歌舞伎や能狂言にもあって、これを味わえるのは私たちの特権だと思います。もちろんそういった「伝統」は各国にあるわけですけど、まず私たちの足元にはこれほどの宝物がある。

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