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1回3350万円!免疫でがんを治す「CAR-T療法」とは?

がん治療を変えるバイオテクノロジー
風邪を自分の免疫で治すように、がんも免疫で治すことができたら――。そんな夢のような治療法として、現在「CAR-T療法」という新しい免疫療法が注目を浴びています。それは、いったいどのような治療法なのでしょうか。そのメカニズムや治療にともなうリスク、現在の状況などを、がん感染症センター都立駒込病院医師で「CAR-T療法」に詳しい下山達先生に解説してもらいました。
 

自然に消えてなくなるがんがある

治療しないで、あえてほっておいたほうが良いタイプの「がん」があるのをご存じでしょうか。「がんもどき」の話ではなく、立派な「がん」での話です。

血液のがんの仲間に悪性リンパ腫という病気があります。最近では、テレビアナウンサーの笠井信輔さんがこの病気を公表されています。

この悪性リンパ腫は、種類が70以上もある複雑な病気で、それぞれ治療法が異なります。多くの場合、抗がん剤治療が必要なのですが、その中に「無治療経過観察」、文字通り「何もしない」のが標準治療となるタイプがあるのです。

体中のリンパ節が腫れて、全身に転移が広がっている検査画像をお見せした後に、「では様子を見ましょう」といきなり伝えたら、患者も家族もびっくりしてしまいます。挙げ句の果てに、「あの医者は何もしてくれない」といって転院してしまう場合もあります。

実際、当院の腫瘍内科でも、よその病院からセカンドオピニオンを求めて来られることが多い病気です。なぜすぐに治療せず、様子を見るという選択をするのでしょうか?

このタイプのリンパ腫は、教科書には「治らない病気」と書いてあるので、患者さんはそれを読んでショックを受けることが多いようです。ですが、病気の進み方が非常にゆっくりなので、症状がなければ、あわてて治療する必要はありません。

そして、驚くべきことにこのタイプの患者さんの1割くらいは、がんが自然に小さくなるのです。

感染症ががんを治す?

とても不思議な現象です。抗がん剤を何度投与しても完治しないのに、自然に病気が良くなるなんて。なんで小さくなるのでしょうか?

実はおよそ100年前に、感染症にかかった後にがんが小さくなった事例が報告されています。こうした話は奇跡的な出来事として語られ、科学的な根拠を示すことができず、長らく信じられていませんでした。

しかし、筆者も実際に、悪性リンパ腫の患者さんが感染症にかかった後、リンパ腫が消えたのを見た経験があります。

他にも、大腸がんと悪性リンパ腫が同時に見つかった患者さんがおられて、大腸がんの手術をまず行って、いざ悪性リンパ腫の治療をしようと検査したら、リンパ腫が消えてしまっていたという”事件”がありました。

検体を取り違えたか? もしかしたら医療ミスでも起こしてしまったのかと、何度も確認をしたのですが、間違いはありませんでした。

このように劇的に消えるケースは滅多にありませんが、がんが小さくなる現象は、悪性リンパ腫では決して珍しいことではありません。研究が進んだ現在では、その理由は、免疫の働きにあることがわかってきました。