新型コロナウイルスの感染拡大は各地で医療崩壊を引き起こし始めている。医療の危機的な状況に対して、“自衛隊派遣”を要請する自治体が出ている。だが、自衛隊派遣には様々な課題もある。
大きな注目を集めたのは、北海道旭川市の「慶友会吉田病院」だった。旭川市では、医療機関でのクラスターが相次ぎ、感染者は12月7日現在、「旭川厚生病院」で237人、「慶友会吉田病院」で184人となっている。
こうした状況の中、「慶友会吉田病院」では12月1日付の「新型コロナウイルス感染症発生のお知らせ(第19報)」(現在は削除)で、11月25日に西川将人旭川市長に対して、「“医療崩壊”とも言うべき状況」であるとして「災害」への認定とともに、「自衛隊看護師の派遣、感染予防具の供給」などを要請したが、「“即座”に却下された」ことを明らかにした。
「新型コロナウイルス感染症発生のお知らせ(第19報)」は吉田良子理事長名でホームページに掲載したもので、その具体的な部分を原文のまま、以下に掲載する。
また、このほかにも旭川医大病院が感染患者の受け入れを拒否し、吉田病院に派遣していた非常勤医を一斉に引き上げたことをあげ、「医療崩壊」の引き金を自ら引いたと指摘している。
これに対して、西川旭川市長は12月2日の記者会見で、派遣依頼があったことを認め、「道に派遣要請が可能かどうか確認したところ『今すぐ判断することは難しい』との見解を受けた」と釈明した。
11月25日に西川市長に自衛隊派遣要請を却下された吉田病院は同日、鈴木直道北海道知事に看護師の派遣など自衛隊の支援を要請している。北海道からの自衛隊派遣要請に対して、政府は災害派遣として自衛隊から看護師を派遣する方向で最終的な調整しており、派遣する看護師は段階的に20人程度まで増やす方向にある。
また、旭川市も12月7日、遅ればせながら自衛隊の派遣を要請した。
一方、大阪府の吉村洋文知事も12月7日、「大阪コロナ重症センター」で看護師が不足していることから自衛隊に看護師の派遣を打診した。大阪府に対しても政府は自衛隊の看護師派遣を検討している。