2020.12.13
# 経営者

バブル直撃後、V字回復した「大和証券」は他社と何が違かったのか?

大和証券グループ本社、中田誠司社長に聞く
大塚 英樹 プロフィール

さらに、リテール部門の「営業改革」も、中田が事実を調べ回ることによって、要因を引き出した結果だ。改革の目的は、顧客の課題解決に向けたコンサルティング体制づくりにある。つまり、顧客ニーズの多様化へのきめ細かな対応である。

最初に中田が訴えたのは、「自分の頭で考え、自分の責任で行動する」という営業員の意識改革だ。今後の営業は、個々人がいかに顧客に寄り添い、課題解決型の付加価値のある営業を行うかで勝負が決まると語り続ける。

それを具現化するため、営業体制を「中央集権型」から「分権型」に転換した。営業目標は本部から支店に指示するトップダウンではなく、支店がボトムアップで決める体制に切り替えたのである。

論理的やり方で営業所員のマネジメント能力向上

そのうえで、支店統合の推進と、社員5名程度から成る小規模営業所の店舗数を拡大する“新店舗戦略”を実施した。新店舗は従来のようにお客の来店を待つのではなく、エリアに打って出る営業活動の拠点とした。

すると、営業所単位の職場の副産物として、ガラス張りのマネジメントが生まれ、営業所員のマネジメント能力が向上し、考え方も醸成された。

それにより、営業所に在籍する人員は全営業店に対し7・2%(2020年3月末)だが、資産導入では全営業店の26・8%(2019年度)。経常利益では、27・7%(2019年度)を占め、顧客基盤・利益面で大きく貢献している。

こうした中田の論理的やり方は、入社後配属された日比谷支店で個人投資家向け営業に携わっていた頃から今日まで一貫している。当時、証券マンはドブ板営業が主流だったが、中田は世界経済や推奨銘柄企業の業績、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)などを調べ上げ、提案型営業を行った。

そのスタイルは企業の増資や社債引き受け、株式新規公開などを手掛ける事業法人部へ異動後も続いた。

そうした中田の論理的手法がグループのビジネスモデルを大きく変えつつある。

中田 誠司(なかた・せいじ)
1960年、東京都生まれ。1983年、早稲田大学政治経済学部卒業後、大和証券入社。日比谷支店に5年間勤務した後、事業法人部を中心に約15年間法人部門に在籍。取引先企業のファイナンスやM&A等に携わる。エクイティ部長、商品戦略部長、経営企画部長などを経て、2009年大和証券グループ本社取締役、2016年代表執行役副社長、2017年より取締役兼代表執行役社長CEO。
 

使命感と幸運思考、確信と覚悟の経営で企業を成功へ導く…「新・成功の法則」を解き明かした大塚英樹著『成長する企業トップの成功戦略を解明する ニューノーマル時代を乗り切る経営』(講談社ビーシー/講談社、11月27日発売)に登場する経営者は下記の通り(肩書表記は、本書出版時のもの)。
越智仁・三菱ケミカルホールディングス社長、若林久・西武鉄道前社長、中山泰男・セコム社長(現会長)、永野 毅・東京海上ホールディングス社長(現会長)、尚山勝男・アサヒグループ食品社長、杉江俊彦・三越伊勢丹ホールディングス社長、服部一郎・アニモ会長、小山正彦・プリンスホテル社長、布施孝之・キリンビール社長、原典之・MS&ADホールディングス社長(三井住友海上社長)、塩澤賢一・アサヒビール社長、中田誠司・大和証券グループ本社社長、車谷暢昭・東芝会長CEO(現社長CEO)、芳井敬一・大和ハウス工業社長、金川千尋・信越化学工業会長、西田義則・大成ロテック社長、中内功・旧ダイエー創業者

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大塚 英樹(おおつか・ひでき)
1950年、兵庫県に生まれる。ジャーナリスト。テレビディレクター、ニューヨークの雑誌スタッフライターを経て、1983年に独立し、新聞、週刊誌、月刊誌で精力的に執筆。逃亡中のグエン・カオ・キ元南ベトナム副大統領など、数々のスクープ・インタビューをものにする。現在は国際経済をはじめとして、政治・社会問題など幅広い分野で活躍。これまで1000人以上の経営者にインタビュー。ダイエーの創業者・中内功には1983年の出会いから、逝去まで密着取材を続けた。
著書には『流通王─中内功とは何者だったのか』『柳井正 未来の歩き方』『作らずに創れ! イノベーションを背負った男、リコー会長・近藤史朗』『会社の命運はトップの胆力で決まる』(以上、講談社)、『続く会社、続かない会社はNo.2で決まる』(講談社+α新書)、『「使命感」が人を動かす─成功するトップの絶対条件』(集英社インターナショナル)、『社長の危機突破法』『確信と覚悟の経営』(以上、さくら舎)などがある。

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