撮影/中村介架
# 経営者

バブル直撃後、V字回復した「大和証券」は他社と何が違かったのか?

大和証券グループ本社、中田誠司社長に聞く

ジャーナリストの大塚英樹氏は1000人以上の経営者に密着取材を重ね、成長戦略を描くトップたちの姿を見つめてきた。過去の成功体験を否定し、いかにして新しい分野に挑戦していったのか。

大塚氏の最新刊『成長する企業トップの成功戦略を解明する ニューノーマル時代を乗り切る経営』(講談社ビーシー/講談社)には、失敗を恐れず新規事業を自らのアイデアで立ち上げていくパイオニア精神にあふれた経済人の実像が活写されている。中田誠司・大和証券グループ本社社長も、その一人だ。短期連載の第4回は、聖域なき構造改革を主導する中田社長の「挑戦」の姿勢に学ぶ。

TOB、公募増資…入社時から常にチャレンジ精神で

私は拙著『使命感が人を動かす』(集英社インターナショナル)で、企業が継続するには昨日と同じではいけないと書いた。過去の自分を否定し、過去の成功体験を否定し、会社のあり方を否定する。

変化するビジネスシーンにおいて変わり続けない限り、継続はできない。それは、過去、常識、慣習を覆し、イノベーションを継続して行うことに他ならない。それができる人材こそ真の「経営者」である。

撮影/中村介架
 

中田誠司は、過去を否定し、新しいことに挑戦し続けている。

2017年4月、社長に就任すると、自ら成長の原動力を創り出すリテール部門の「営業改革」に着手する。営業目標を本部が決め、支店に下す“中央集権体制”から、支店が決める“分権型”に転換した。つまり、トップダウンからボトムアップへの意思決定方式の変革である。

さらに中田は、持続的成長を実現するため、ネット銀行、リート(不動産投資信託)、農業・食料関連事業、エネルギー・インフラ関連事業、デジタル通貨といった新規事業と、伝統的証券ビジネスを組み合わせた「ハイブリッド型総合証券グループ」を目指し、聖域なき構造改革を主導している。

こうした中田のチャレンジ精神は、今に始まったことではない。1983年入社以来、主に法人部門を歩んできた中田は、随所で、新しいことに果敢に挑み、改革を成就させてきた。

1つ目は、大和証券初のTOB(株式公開買付け)の実施である。

93年、企業法人第3部課長の時、かつて担当していたある大手ゴムホースメーカーの「櫻護謨」のオーナー社長から、不動産会社に買い占められた株を取り戻したいと相談を受けた。

オーナー社長から経営理念やビジョン、想いを聞き、課題解決の施策を考え抜いた。その結果、中田は一計を案じ、当時日本であまり例がないTOBを実施することに挑んだ。

中田は顧客基点で関係者と話し合い、実施期間や買い取り価格などを決めた。社内にTOBのノウハウがなかったため、届出書提出から資料、パンフレット作製に至るまで全て中田が自ら行った。それによりTOBは成功し、中田は大和のTOBの“草分け”となった。

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