モーガン・ウォーレン(2019年)/Photo by Gettyimages
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アメリカ「分断」を読み解く鍵は、カントリーミュージック?トランプ支持者の怒りが消えないワケ

コロナ禍の米国で、じつは「カントリーミュージック」がヒットしている。特にアラバマ、アイダホ、ユタなど伝統的に共和党を支持する「赤い州」で聴かれており、歌われる内容は「分断」を象徴しているとも言える。
来年1月から始動するバイデン政権は、都市と地方の対立を融和し、大国を再生できるのか? 
米国の投資運用会社で働いた経験があり、『マネーの代理人たち』の著書もある小出・フィッシャー・美奈氏が、「音楽」を軸にして今の米国を読み解く。

どうして?カントリーミュージックがなぜか好調

コロナ発生以来、アメリカでズームやオンラインゲームと並んで、なぜか好調なジャンルがある。「カントリーミュージック」だ。

日本でカントリーと言えば、ジョン・デンバーの「カントリーロード」が知られているくらいで、一般にはあまり馴染みがないかもしれない。ポップ歌手として知られるテイラー・スウィフトがカントリー歌手だったと言うと、「えっ?」と思われるだろうか。

テイラー・スウィフト(2011年)/Photo by Gettyimages
 

でも、大激戦となった先の大統領選挙と今の米国の「分断」を理解するには、カントリーミュージックがひとつの手がかりになるかもしれない。

米国ではロックダウン以降、音楽ダウンロードが全体的に落ち込んだ中、カントリーだけが1割以上リスナーを増やし(ニールセン調べ)、8月にはモーガン・ウォーレンの「セブン・サマーズ」が、カントリージャンルで実に21年ぶりに全米ヒットチャートに飛び出した。

擦り切れたジーンズにピックアップトラック、バーボンの空き瓶ーー。そんなアイテムがよく登場するカントリーミュージックは、文字通り「田舎(カントリー)の音楽(ミュージック)」だ。先が見えないロックダウンの中、そこに謳われる変わらない暮らしやコミュニティーへの帰属感が、人々に懐かしさや安心感を与えるのかもしれない。

音楽誌の集計によると、カントリーが最も聴かれている州は、アラバマ、アーカンソー、アイダホ、ユタ、ペンシルバニア、オハイオ、ウェストバージニア、アラスカなど。これらの地域は、伝統的に共和党支持の「赤い州」と重なる(今回ペンシルバニアは同州出身のバイデン氏が獲得したが、1.2%という僅差だった)。

もちろん、カントリーのファンやアーチストにはリベラルもいるし、トランプ嫌いもいる。しかし、ごく大雑把には「赤(共和党支持)」と「青(民主党支持)」の分断は、「カントリーミュージックを聴くアメリカと聴かないアメリカ」の分断とも重なるのだ。

コロナ禍による失業率増加にもかかわらず、先の大統領選挙で「カントリーを聴くアメリカ」でのトランプ支持票が、なぜここまで強かったのか。「赤い州」の気持ちを理解するにはその音楽を聴くことが参考になるかもしれない。