2020.12.10
# 恐竜

「ストケソサウルス」の謎……北米と欧州で発見された同じ名前の恐竜

ティラノサウルス徹底研究 第7回
小林 快次, MOVE編集部 プロフィール

ストケソサウルス兄弟はなぜ生き別れたのか?

同じ名前で別の種ということは、平たく言えば、兄弟がアメリカとイギリスそれぞれに分かれて住んでいたということです。

そこで仮に、兄がストケソサウルス・クレベランディ、弟がストケソサウルス・ラングハミであるとして、なぜ兄弟が生き別れになったのかを考えてみましょう。可能性としては次の4パターンにしぼられます。

1.兄弟がアメリカに住んでいて、弟がイギリスに引っ越した。
2.兄弟がイギリスに住んでいて、兄がアメリカに引っ越した。
3.兄弟はもともと別のところに住んでいて、兄がアメリカに、弟がイギリスに引っ越した。
4.もともとどちらにも兄弟が住んでいて、何らかの理由でアメリカの弟がいなくなり、イギリスの兄がいなくなった。

しかし当然、恐竜時代には船も飛行機もありませんから、1~3の可能性を探る場合、ふつうに考えれば大西洋を渡ることは不可能です。

これについては実は、当時の大西洋はまだ開き始めたばかりで、どこかがつながっていて、動物の行き来ができたのではないかと考えられています。その証拠に、ジュラ紀後期の恐竜を見てみると、アメリカとヨーロッパは似た恐竜がたくさん見つかっているのです。たとえば次の2種の獣脚類恐竜です。

・トルボサウルス(メガロサウルス科で全長10メートルほどの巨大な肉食恐竜)
・アロサウルス(アロサウルス科で全長10メートルほどの巨大な肉食恐竜)

いずれも凶暴な肉食恐竜で、アメリカとヨーロッパでは、この2種にまじってティラノ軍団のストケソサウルスが競合していたわけです。ただ、ストケソサウルスは大きさが4メートルほどですから、彼らにかなうはずありません。当時のティラノ軍団は、アロサウルスなどのスター肉食恐竜に圧倒されていました。

これらの肉食恐竜たちは、ジュラ紀後期の時代(またはそれよりも少し前)には、まだ地形的に大陸間を移動できた可能性があります。現在の大西洋の最も狭いところでも3000キロほどもありますから、大陸はかなり長い年月をかけてゆっくりと移動したんですね。

 

ちなみに、当時の大陸の中央、現在の大西洋の深さ5000メートルほどの海底には、大西洋中央海嶺という高さ約2500メートルの山脈があります。この海嶺で海洋プレートが作られ、1年に2.5センチ程度のスピードで、大西洋は東西に広がっていきました。これは人の爪が伸びるより少し遅いくらいに相当しています。

* * *

次回『恐竜は過酷な“山越え”をしていた! ジュラ紀に存在した巨大山脈とは?』

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