2020.12.09
# 書評

【書評】医学と感染症の狭間に生まれた「利権」を追う必読の書

コロナで後手を打つ無教養政権への痛撃
海堂 尊 プロフィール

インド映画のスタイル

私の『コロナ黙示録』はフィクションなので若干(?)、放埒に筆を伸ばしたが、山岡氏の著作は常に中立的で、フェアであろうと努めている。このため、冷静に現政権のコロナ対策を評価したい人にとっては山岡氏の著作の方が有意義だろう。1章で現代のコロナ対策を論じた後、2章で明治時代にカットバックするのを迂遠に感じる読者もいるかもしれないが、過去の経緯がわからなければ現在を正確に理解できないのである。

映画に喩えれば私の『コロナ黙示録』は「ハリウッド流」、山岡氏の『ドキュメント感染症利権』は「インド風」である。インド映画は主人公の三代前から説き起こす。どちらがいいという問題ではなく、そうしたスタイルを選択したということである。

安倍→菅「無教養政権」への痛撃

ちなみに「安倍→菅」現政権は「過去」を削除することで、フリーハンドで野放図な振る舞いを容認させている。それは民主主義の根幹を破壊する行為なのだが、屁理屈で自己弁護している。

「安倍→菅政権」は「無教養政権」だ。「云々」を「でんでん」と読み「総理大臣は立法府の長である」なんて中学受験にも落ちてしまいそうな発言を平然とする人物を、「未曾有」を「みぞうゆう」と読む教養のなさを曝け出した厚顔無恥な人物が盟友として補佐してきた。右腕だった後継者は国会のデビュー論戦で人気コミックの決めセリフを得意げに引用し、それをメディアが嬉々として報道する。その様を見た時、「無教養政府」が創出し「忖度メディア」が誘導した「衆愚社会」はついにここまで来たか、と愕然とした。ちなみに今、悪いことをして担任の先生に叱られると、「お答えは差し控える」なんて言う小学生が急増中だそうである。世も末である。

そんな退嬰(たいえい)した現代の日本社会に毅然として、正しい医学の教養を示した書、それが『ドキュメント感染症利権』なのである。

この記事の執筆者・海堂尊さんの対談記事が下記よりお読みいただけます。

2020年4月、「緊急事態」が宣言される中リアルタイムで執筆され、緊急出版された小説『コロナ黙示録』と、ノンフィクション『ドキュメント感染症利権』。
両作品の著者が縦横無尽に問う「この国はなぜコロナと闘えないのか」──。

検証・コロナvs政治 ──特集対談
海堂尊×山岡淳一郎(前編)
 http://www.webchikuma.jp/articles/-/2235
海堂尊×山岡淳一郎(後編)
 http://www.webchikuma.jp/articles/-/2236

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