NTTドコモ新料金プラン「ahamo」が抱える3つの不自然な点

菅政権「肝いり政策」の矛盾があらわに
西田 宗千佳 プロフィール

値下げを手放しで喜べない理由

総務省は過去10年にわたり、携帯電話事業における「大手寡占の状況」を問題視してきた。

競争加速のために、MVNOが大手と競争できるよう、接続料金の引き下げや携帯電話端末の販売割引の抑制、通信料金と端末販売料金の分離会計など、複数の施策が導入されてきた。

それらの各施策には、問題がある、ないしは効果に疑問のあるものが含まれるが(通信料金と端末販売料金の分離がはらむ問題点については、以前の記事でも指摘したとおりだ)、それでも「競争の促進」に軸が置かれていたのは間違いない。

楽天に「第4の携帯電話事業者」として電波の利用割り当てをおこなったのも、そのためだ。

だが、今回の「大手が大幅に値下げしなければ意味がない」という政策が、「4割値下げ」論者である菅総理のイニシアティブで推し進められたことで、結局はふたたび寡占状態が強化され、過去の競争促進政策はほぼ無意味になってしまった。

消費者である我々は果たして、「値下げされた」と手放しで喜んでいいのだろうか?

次に市場が硬直したら、また政府の一喝を待つのか?

それは明らかに不健全な姿だ。

じつは「複雑なプラン」です

値下げそのものは歓迎すべきことだが、果たして、その経緯は本当に「これでよかった」のか。理想的には、企業同士の公正・健全な「競争の結果」として値下げが生まれるべきだった。

NTTドコモは、NTTの完全子会社になる。それは、NTTドコモが「携帯電話のトップシェアではあるものの、契約者数増加で伸び悩む」状態にあることを危惧してのものだ。その改革プロセスの1つとして「ahamoにつながる企画」があったのは間違いない。だとすれば、政府の圧力がなくても、今回のプランは自然と出てきたのではないか。

ahamoには制約も多く、すべてのユーザーに勧められるプランではない。オンライン前提かつ、家族割引・長期割引などがいっさい適用されない点は重要だ。また、ひとたびahamoに移行すると、長期間ドコモを使ってきた人でも、それ以前の利用期間は「リセット」される。つまり、長期契約割引があるプランに再度、戻った際には、「契約期間はゼロ」になってしまう。

【写真】ahamoは「従来型とは違うもの」という位置づけなので、既存契約のほうが条件が良い人もいる。完全な置き換えプランでない点には注意が必要だahamoは「従来型とは違うもの」という位置づけなので、既存契約のほうが条件が良い人もいる。完全な置き換えプランでない点には注意が必要だ

サービスそのものはシンプルだが、従来のプランとの違いはかなり複雑──。

この点を理解せずに、NTTドコモの携帯電話販売店などで説明や契約対応を求める人が出てトラブルになりそうだ……という懸念もある。単に「メインブランドである」というだけであり、決して「説明が不要なプラン」でも、MNPして安価な事業者に移ることより「わかりやすいプラン」でもない。じつはそこに、総務大臣側の認識とは大きな矛盾がある。

どんなジャンルのビジネスであっても、サービスの多様性は必要であり、それは多数の事業者の存在と健全な競争によって初めて維持される。一部の大手がすべてのサービスを用意する状況(まさに寡占につながる状況だ)を、ずっと続けていけるだろうか?

値下げは嬉しい。そのこと自体は否定しない。

しかし、寡占を加速するような政策が、それも政権トップからのある種の恫喝のような形で実現されたことには、疑問と懸念を抱かざるを得ないのだ。

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