Photo by aga7ta/iStock

「許す」とは訳せない英単語「allow」の意外な3つの意味

日本人が間違いやすい英単語

科学技術英語関係の仕事に長年携わり、『理系のための英語論文執筆ガイド』『間違いだらけの英語科学論文』などの著書がある原田豊太郎さんこれらの本を執筆してきた理由は、「英和/和英辞典を補完する」ことだったといいます。

多くの辞書を買い集め、使い込んではみたものの、思うような訳語や用法にたどり着けない。ならば、無数に収集してきた用例を徹底的に整理しなおして、自分でつくるしかない! そう考えたというのです。

そんな原田さんに、誰もが知っているはずなのに実は理解していない人の多い英単語「allow」について解説していただきました。

たとえば次の例文を、あなたならどう訳しますか?
Newton did not allow for the increased density of the Earth's interior.

「許す」だけでは使いこなせない allow

理系の世界では、従来不可能であったことを可能にするために、日々研究や開発が行われている。「不可能なことを可能にする、あるいは可能にした」ことを表現する場面で大活躍する動詞が、ここで取り上げる allow である。

allow は、古フランス語起源の動詞である。元々はラテン語において音韻の近い2つの動詞、すなわち「ほめる」という意味の動詞と「与える」という意味の動詞が古フランス語に入り、そこで1つの動詞になったという面白い歴史をもっている。

理系英語における allow の主語には、「ものごと」がくることが多い。そのため、一般英語で多用される「許す」「許可する」の意味しか知らない人は、はじめのうちは allow を使うのが少し難しいかもしれない。だが、いったん意味や使う場面がわかってしまえば、使いやすい動詞である。

まずは、allow を用いた典型的な例文を挙げて、意味や使用する場面を考えてみたい。

【例文1】
The laboratory method allows the investigation of detailed theoretical issues that would not be possible in a naturalistic setting.
(その実験室の方法を用いると、自然環境では不可能と思われる詳細な理論的問題を調べることができる

例文はSVO型である。直訳すると「実験室の方法は、自然環境では不可能と思われる詳細な理論的問題を調査することを許す」という不自然な日本語になる。日本語には、人ではなく方法のような「こと」が許す、という表現が存在しないからである。

最近の英和辞典には、allow の語義に「~することを可能にする」が入っているから、例文の訳文のような自然な日本語が簡単に出てきた読者もいるかもしれない。

 

実験の場面で用いる「放任」の allow

つづいて、「~するままにさせておく」「自由にさせておく」の allow に移ろう。この意味の場合、上で見た「可能にする」の意味の allow に比べ、使用される場面は限られている。

【例文2】
The reaction was allowed to continue at room temperature with constant stirring for 1.5 h.
(反応は、絶えず攪拌しながら室温で1.5時間続けられた)
【例文3】
The samples were allowed to stand for at least 3 days.
(資料は、少なくとも3日間そのままの状態で放置した)

2つの例文から、この allow が「自由にさせておく」の意味であることが理解できよう。ほかに、たとえば「熱い生成物をさます」場合、

【例文4】
A hot product is allowed to cool.

とすればよい。なお、例文3の stand は「元のままの状態で存在する」という意味である。