ALS(筋萎縮性側索硬化症)を検索すると「感覚があるままに体が動かなくなる病気」という説明が多くあります。もう少し詳しい書き方を探すと「筋肉が動かなくなってしまう」という説明がなされています。そして「現在、効果の認定されている治療法がない」といわれています。そんな中、罹患告知から1年が過ぎ、足から始まったALSの進行が手に及んできているにも関わらず、ぼくの場合は「声」と「呼吸」に関してはそんなに進行が著しくないと思われます。その現状をこれからお話しします。
声に影響しない病気であってほしい…
以前の連載でもお伝えしたように、最初に下肢(足)の異常を感じてから比較的に速いスピードで歩けなくなっていき、半年近くたった検査入院時には、杖なしでは歩けなくなりました。合わせて検査入院前には上肢(手・腕)の異常も軽く感じ始めていました。しかしながら「声」や「呼吸」に関しては、花粉症の時期に少し例年よりも状態が重めに感じた以外は、異常を認識することがなかったのです。
まだ病名が明らかでなかった時、通院して検査をしてくれた主治医からも、入院中の担当の医師からも再三「呼吸」や「嚥下(飲み込み)」に問題はないか聞かれましたが、入院前も少し時間を遡っても、むせたりしたことは記憶にほとんどありませんでした。確かに首や背中の筋肉がいつも以上に「凝る」感じはありました。しかしそれは下肢が動かなくなってきたことを上半身で補っていることが原因だろうと思っていました。
私の問診での答えに、検査を担当する医師たちは「筋肉系の難病」を中心に検査をしていく方向で進めていくことにしたと話してくれました。後で聞いたところによると、この時点で多くの症例がALS罹患の可能性の高さを現していました。しかし、それでもALSではなく「筋肉系の難病」を中心に考えられていた理由は、口・舌・喉の運動障害によって起きる構音障害(しゃべりにくい、呂律がまわらない)や嚥下障害(食べ物や飲み物が飲み込みにくい)が症例の「球麻痺」がはっきりと出ていないからなのでした。
当時、自分の病名を「名無しの権兵衛」と名付けて検査に臨んだ私は、確かにはっきりとした病名を知る事を1番の目的としていました。でも「声」を失う病気は避けたいと思っていました。
たとえ難病であっても「声」を失うことが少ない「筋肉系の病気」であればと思っていました。