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ふかわりょうが「仰向けの羊」から考えた「人間の本質」

『世の中と足並みがそろわない』(2)

お笑い芸人ふかわりょうさんの不器用すぎる日常を切り取ったエッセイ集『世の中と足並みがそろわない』が発売日に即重版するなど話題だ。

タイトル通り、どこにもなじめない、何にも染まれないふかわさんは、幼少期からずっと、世の中との隔たりと向き合ってきた"隔たリスト"だという。

スマホ画面が割れたままの女性、「ポスト出川」から舵を切った30歳、誰も触れなくなった「結婚」のこと、そしてタモリさんからの突然の電話――。ちょっといびつだけれどニヤリと笑える全22編の中から、アイスランドで感じた死生観について綴った一編「溺れる羊」を特別公開する。

溺れる羊

夕暮れ時に気配を感じ、見上げてみれば、電線の上を動く黒い影。猫かな、いや猫が電線を渡るだろうか、それに猫にしては尻尾が太く、どちらかと言うとタヌキのよう。調べてみると、それはハクビシン。鼻に白い筋のとおったジャコウネコ科の哺乳類。夜行性で行動範囲は半径5キロメートルもあるのだとか。それにしても、こんな都心で見かけるなんて。巣に戻るのか餌を探しに行くのか、東京の住宅街の電線を器用に伝うハクビシン。アライグマのように愛らしい風貌ですが、家屋に巣を作ってしまうことから、日本では害獣とみなされています。   

それからというもの、夕方になると空を見上げるようになりました。スーパームーンの日くらいしか空を見上げることがなくなった人間たちは皆スマホに夢中なので、ハクビシンにとっては行動しやすくなったのかもしれません。中には、私のように後をつけようとする人間もいるので、油断はできませんが。

 

眺めのいいホテルの屋上。見渡していたら、電波塔に目が留まりました。東京タワーほどではないですが、数十メートルはあるであろう鉄塔の中腹が、黒くギザギザしています。細い棒のようなものがぎっしりと敷き詰められ、砂鉄のように飛び出して。一体あれはなんなのか。ホテルのスタッフに尋ねると、思わず耳を疑いました。電波塔の中腹にあるのは、カラスの巣。カラスがゴミ捨て場などから鉄のハンガーを咥えて持ち去り、せっせと運んで作った大きな巣でした。直径10メートルは優にあるでしょうか。ここにどれほどのカラスがやってくるのか。森の中に木の枝で作るはずのカラスの巣。話によると、避雷針があるので、木に作るよりも安全だとか。頭がいいのか、仕方なしなのか。それからというもの、電波塔を見かける度にその中腹に視線を向けるようになりましたが、他の場所ではまだ確認できていません。

家の中で時折遭遇する小さな蜘蛛。昔から「益虫だから」殺したらダメと言われています。益虫とはいえ見た目がなかなか刺激的なので、遭遇するとティッシュや手で包んで窓の外に放り出します。田舎に行った時など、信じられないサイズのものが登場するので、夏の帰省の際は、どうかあいつに出会いませんようにと願っていたものです。森の中を散策していて、顔に何かかぶさったかと思えば蜘蛛の巣だったことがよくありました。木々の間に綺麗な放射状の巣を張って獲物を狙うハンター。ただ、蜘蛛には造網性と徘徊性の二種類いて、すべての蜘蛛が巣を張るわけではないようです。