相撲人気復活に水を差す横綱審議委員会の「老害的超上から目線」

横綱の権威を守る前にやるべきこと
西尾 克洋 プロフィール

ご意見番は必要だが

まず、「横綱審議委員会の必要性」について。

横綱審議委員会発足の理由について、一言で表せば、横綱の権威を保つための機関が求められたためである。1950年、3横綱が途中休場し、加えて前田山が不祥事により引退する事態が重なり、横綱の濫造を防止する目的で吉田司家ではなく「有識者による推薦を」ということで誕生している。

また、横綱審議委員会の取扱要件は横綱の推薦だけではなく、横綱に関する案件に対して進言することも含まれており、普段、我々が目にするのはこちらの役割だ。横綱審議委員会は組織として求められている役割を果たしており、ご意見番としての言動は「越権行為」ではないことをご認識いただきたい。

〔PHOTO〕Gettyimages

組織としての役割が見えたところで、ではこの二つの役割に関する是非を考えてみよう。

横綱推挙を有識者が行うということに関しては、それほど問題に無いだろう。なぜなら、これについては「2場所連続優勝か、それに準ずる成績」という明確な基準があり、その是非についてそれほど大きなブレを生むことはないし、今のところ横綱審議委員会の推薦と世論との間で大きな乖離が生じたことは無いからである。

問題は、横綱に対する進言という役割である。そもそも横綱に進言可能な組織は必要なのだろうか?

この点に関しては「必要」と言わざるを得ないだろう。

横綱というのは番付の頂点ということも作用してか、歴史的に見ても物議を醸す言動や不祥事を起こしやすい地位である。不幸な形で角界を去り、激しい非難を受けるなどしているのは最近に限った話ではないのだ。

横綱在位中の不祥事を挙げれば、過去には、大鵬とそのライバルである柏戸が拳銃を不法所持していたという事件もあった。北の富士は不眠症で途中休場ということもあった。双羽黒は生活態度を叱責されて失踪し、その後廃業した。貴乃花の洗脳騒動によるゴタゴタも忘れ難いし、曙は大阪のクラブで泥酔して大暴れしたこともあった。

不思議な話だが、これが最上位の大関になると現役中に目立った不祥事を起こしている力士は殆どいない。近年では野球賭博問題で解雇された琴光喜が居るくらいだ。

朝青龍の騒動の時にも話題になったが、横綱になると親方が注意をしても歯止めが利かなくなることもある。周囲も意見しにくくなるし、力士によってはイエスマンで周囲を固めることもある。土俵での強さを求めながら自分を律するのは難しいことなのである。

 

こうした経緯からも、横綱が問題を起こす危険性が高いことを考慮し、彼らを守る意味でも、強い意見を言える権威を持つ組織は確かに必要なのだ。そして権威を保持するためにもステータスある有識者で組織を構成するというのも理にかなっていると言えるだろう。

横綱審議委員会は歴史的な経緯と、横綱という立場がもつ危うさを考慮しても必要性を否定できないし、仮に廃止した場合、その役割を引き継ぐ新たな組織やポストが必要になると思う。

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