東京国立博物館蔵

仮想現実に覆われたこの世界で認識を変えれば覇者になれるのか

「マトリックス」と空海の「唯識」

仮想現実が広がっているが現実と本当に違うのか?

例えば、読者が使っているこの記事を読むための端末や、見上げたときに見える景色、さらには読者自身も実は「実体としては存在しない」ものであり、「コンピュータ・グラフィック」や「ホログラム」のように「見えるだけ」と言われたらどうだろうか?

「そんなSFかファンタジーのような話は面白いけれども、実際にはありえないよね。キアヌ・リーブスが主演した『マトリックス』のような、現実と区別がつかない仮想現実は存在するかも知れないけど・・・」というのが標準的反応であろう。

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しかし、日本では空海(弘法大師)が先鞭をつけて広めた密教(仏教)の「唯識(ゆいしき)」という概念は、現代的に言えば、「この世はマトリックスのような仮想現実であり、そのプログラムのソースコードをマスターすれば、自分の目の前の世界を書き換えることができる」というものであるというのが私の考えだ、

仏教の修行の究極の目的は悟りを開くことだと言ってよいが、実は悟りを開くということは「自分が目の前で見ている『仮想現実=唯識』を『自分自身で完全にコントロール』できるようになる」ということなのだ。

もっと仏教的に言えば、「周りで起こることに左右されずに、常に自分の気持ちを平静かつ穏やかにいることができる」人が悟りを開いた人なのである。

空海が学んだ密教は、西遊記で有名な三蔵法師(玄奘)が天竺(インド)から持ち帰り翻訳したものがベースになっているが、その時代にインドではこの世がマトリックスであることを見抜いていたことには驚かされる。

 

「この世はマトリックス」という考えは、古代からの宗教哲学だけの話ではない。実は最新科学の宇宙論においても、ブラックホールなどの研究を通じて、この宇宙は「数字によって創造されたプログラム」あるいは、「宇宙は2次元平面から投影された3次元ホログラム」という考え方が、第一線の科学者によって真剣に議論されているのだ。