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戦場のフェイク・ニュースが歴史学を変えた

マルク・ブロックとアナール学派の誕生
「その噂はあまりに聞き心地がよく……」――。フェイク・ニュースやポスト・トゥルースは、今に始まった現象ではない。第一次世界大戦下、西部戦線で起こったある出来事は、歴史家をフェイク拡散の社会的条件の省察へと向かわせ、歴史学そのものの歴史にある決定的な転回をもたらすことになる――。

戦場の歴史家

1914年10月18日、歴史家マルク・ブロックの姿は西部戦線の陣中にあった。鉄条網を隔てて機関銃が対峙する中、ぬかるんだ汚水に膝まで浸かりながら、ブロックは歩兵軍曹として塹壕戦を耐えていた。

不意に隣の兵士が敵の弾に斃れ、ブロックの肩に崩れ落ちた。ギユマンという名のその男は、ブロックが戦場で出会った親友の一人だった。その時、歴史家は生まれて初めて、生を失った人体の質量を両腕に感じた。

マルク・ブロック。現代歴史学に一大変革をもたらした「アナール学派」の創始者として今日まで名を残すこの歴史家は、28歳からの4年間を兵士として、仏独国境の最前線で軍務に服した経験を持つ。

第一次世界大戦における戦場経験は、エリートとして学問形成した彼が真に独創的な研究テーマを見出す契機となった。

 

国王が患部に触れると病が治癒するという民間伝承を検証した『王の奇跡』(1924) 、地域による農村風景の多様性を経済構造の差異から説明した『フランス農村史の基本性格』(1931) をはじめ、生涯にわたって個性的な研究を発表し続けたブロックだが、決して当初から進取の気性を持っていたわけではない。

民衆の集合心性に着目する「アナール学派」の創始者という我々のよく知るマルク・ブロックは、一体どのような過程を経て生まれたのだろうか。

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