漫画/伊藤理佐 文/FRaUweb

連絡をすればなんでもOKなのか

「連絡しないでゴメン、つい飲んじゃって」

同居するパートナーが、夜遅くなってこう言いながら帰ってくる。それについてムッとした気持ちをどうすればいいのか。そんなテーマが描かれたマンガ「蚊」を紹介した記事に対し、「連絡しないで飲んでくる人に二度とご飯は作らなくていい」「夫婦だろうが友人だろうが連絡もしないで待たせるなんておかしい、相手を軽んじてる」などと様々な声が寄せられた。

では、「連絡をすれば」なんでも許すことはできるのだろうか
そんなことを考えさせられるのが、今回ご紹介する伊藤理佐さんによるマンガ『おいピータン!!』5巻3話の「許せますか」である。

これは「仲の良さそうな新婚夫婦の28日の記録」だ。
ふたりは共働きの新婚カップルで、ともに予定が入って家でご飯ができないときは必ず連絡を入れている。
「ごめん(会社の飲み会から)どうしても抜けられなくて遅くなる」
「ごめん、先輩に連れてこられちゃってさー、遅くなるー」
「今日大森さんから仕事の話あるって言ってさ、ご飯食べて帰るね」

(c)伊藤理佐/講談社『おいピータン!!』5巻より

「いいよいいよ」「大丈夫大丈夫」「飲みすぎないようにね」お互いに嫌な声もせずににこやかに対応している。

こんなの余裕
まだまだ大丈夫

しかし、お互いに笑いはひきつっていく……。

その「いいよ」はちょっと無理してないか

ああ、伊藤理佐さんはこういう「実はちょっと無理して笑顔になっている裏のモヤモヤ」を描き出すのが上手なのだなあと改めて感じさせられる。

ちなみに説明をすると、伊藤理佐さんのマンガ『おいピータン!!』は、20年以上続いているオムニバスショート漫画だ。手塚治虫漫画賞短編賞など多くの賞を受賞している名作で、現在は主人公のある事情につき『おいおいピータン!!』と名前を変えて「Kiss」で連載が続いている。描かれているのは、「食」を中心のテーマとしながら、日ごろ我々がモヤモヤしていることや、ドキッとするような事柄ばかり。そうそう、あるある!と思いながら、ムカッとしたことも笑い飛ばすことで、なんだか最後はすっきりすることができるのだ。あまりに人生のあるあるが見事に描かれているので、20年の蓄積の中から厳選し、「おいピータン!!人間学」という連載で無料試し読みの形でご紹介させていただいている次第である。

話を「ごめん!と言いさえすれば仕事でもないのにパートナーを置いて異性も含めてご飯を食べにいきまくってもいいものかどうか問題(しかもこの例は新婚)」に戻そう。そもそも新婚でなかったとしても、互いに好意を持って一緒に暮らしているカップルの多くは、「美味しいものを一緒に食べたい」「楽しいことを一緒にしたい」と思っている場合が多いことだろう。しかし当然ながらそれぞれは他人で、それぞれの世界もある。だからそれぞれの世界で楽しむことだって、認める必要がある。一切外部とは楽しむな!となると、それはモラハラだ。

ではどこまで「相手の自由」を認めるべきなんだろう? 

(c)伊藤理佐/講談社『おいピータン!!』5巻

「今日は遅くなると連絡があったときに、そうかあと思いながらも笑顔でいいよと言う」行動の裏には、「そりゃそうだよね、個人の世界があって、それも大切にしてほしいし。一緒に食事できたら嬉しいけどさ」というような、ちょっとやせ我慢しての「相手の世界を尊重したいとも思っている私(俺)」がいることが多いだろう。

でもそれが、「一緒に行きたいね」と言っていたお店だったら? 「一緒に食べたいね」と話していた料理だったら? 相手が異性だったら?
果たしてマンガの中の新婚カップルは「どこまで許せた」のか。その「どこまで」は他人が決めるものではなくて、二人が決めるもので、その「どこまで」について話すだけでも深いコミュニケーションになるのだなあとも思わされる。また、今回は食事の話だったけれど、家事のこととか、お金のこととか、世の中にはたくさんの「どこまで」もある。

あなただったらどこまで許せるだろうか。どこまで許してほしいだろうか。きっと人の数だけ「どこ」のラインはあることだろう。