2019年6月2日、安田記念でのアーモンド・アイ(Photo by gettyimages)
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アーモンドアイら三強が激突!「奇跡のレース」ジャパンCが日本競馬の新たな「物語」を生む

本日15時40分から発走予定の第40回ジャパンカップ(G1)。これがラストランになる8冠馬のアーモンドアイに、ともに無敗の3冠馬コントレイル、デアリングタクトが激突する「奇跡のレース」だ。

日本競馬の長い歴史上でも「ありえない」奇跡はなぜ起きたのか。競馬と小説の意外な共通点とは。ずばり、どの馬に賭けるのかーー。

ザ・ロイヤルファミリー』(新潮社)で 山本周五郎賞とJRA賞馬事文化賞をW受賞した、無類の競馬好き作家・早見和真氏が、現役の競馬記者と縦横無尽に語り尽くした。

今年のジャパンカップは「奇跡のレース」

競馬記者 なんでこんなに歴史的快挙ばっかりが続くのかなと、驚かされっぱなしの1年でした。そして、ジャパンカップ。史上初の無敗牝馬3冠デアリングタクト、父親ディープインパクトに続く史上3頭目の無敗牡馬3冠コントレイル、史上初となる芝G1での8勝目をあげたアーモンドアイ。こんな怪物馬たちが同じレースで激突するなんて、去年、誰が想像できたでしょうか。

早見 もし僕が小説に『同じ年に無敗の牝馬三冠、牡馬三冠が生まれた。さらに八冠を成し遂げる馬もいた。彼らが同じレースに出ることになった』と書いたとしましょう。間違いなく、競馬を知っている読者から「そんなこと、ありえない!」と袋だたきにあいますよ。そんな嘘みたいなことが、今、起きているんですよね。

早見和真氏 ©新潮社

競馬記者 「ダービースタリオン」みたいなゲームの世界でも、ありえないでしょうね。3頭の生産牧場がばらばらだったのが、まず幸運でした。同じ牧場だったら、直接対決はさせなかったでしょうから。もうひとつ、コロナのせいで、短期免許で来日していた外国人騎手が来られなくなったことも、関係しているかもしれません。もしライアン・ムーアなどの海外の名手が今年日本に来ていたら、ジャパンカップに至るまでのレース結果が変わっていた可能性もあります。

早見 そして、なんといってもJRAの英断が大きかったと思います。

競馬記者 私もそう思います。

早見 2月末から観客を入れずに競馬を続けたんですね。当時は、忖度しすぎだ、みたいな批判もけっこうありました。でも、もし、あのとき観客を入れたまま続けていて、観戦者の中からコロナにかかった人を出していたら、競馬を中断しないといけない時期があったと思うんです。もしそれが小さなレースだったとしても、玉突きのように、皐月賞なのかダービーなのかオークスなのか桜花賞なのか分からないですけど、大きなレースが中止や延期になっていたかもしれません。もしそうなっていたら、2頭の無敗3冠馬、この年に誕生してなかったんですよね。

競馬記者 アメリカでは、日本のダービーに相当するケンタッキーダービーという大きなレースが、例年通りの5月ではなく9月に延期されたうえで開催されました。

早見 『ザ・ロイヤルファミリー』が人や馬、そして思いの「継承」の物語だからこじつけるわけではありませんが、レースだって毎年、継承されていって、一年一年、歴史を積み重ねているんだなと、本当に思いました。今年、歴史を分断しなかったのが競馬界で、悲しいけれども分断してしまったのが高校野球だったと思うんですよ。やり続けられた競技と断念せざるを得なかった競技の差はすごく大きいのだと思います。

 

競馬記者 今年レースが続いてることはもうそれだけで、競馬に関係する多くの人の努力が生んだ奇跡みたいなものですね。

早見 そう思います。がんばってやり続けたことへのご褒美として、デアリングタクト、コントレイル、そしてアーモンドアイがぶつかるという奇跡が起こったんじゃないかなと、そういう風に僕には見えます。