日本を代表する憧れリゾートの一つである星野リゾートは、なぜこれほどまでに多くの人を惹きつけるのでしょうか? ホテルジャーナリスト・せきねきょうこさんならではの視点でその魅力に迫ります。今回は、自然に触れながら遊べる「星野リゾート リゾナーレ那須」をご紹介します。

那須高原の爽やかな空気と豊かな自然
アグリツーリズモリゾートの原点に迫る

四季を通じて自然に触れることで、森や林、里山の魅力に気づき、自然の摂理を体感する楽しい滞在が可能。

“自然を遊び尽くす”として、那須高原の清々しいロケーションに日本初の本格的なアグリツーリズモリゾートをオープンした「リゾナーレ那須」。那須連山の麓に広がる那須高原地帯は、清浄な空気と手つかずの自然が残り、高原リゾート地として古くから親しまれています。

那須は温泉の宝庫。「リゾナーレ那須」にも温泉が引かれている。1000年以上の歴史ある温泉で森の声に耳を傾けてみるのも快適。

那須連山の主峰である茶臼岳の標高は1915m。栃木県を代表する活火山であり、那須のダイナミックなランドスケープのアイコン的な存在でもあります。温泉が多く湧出するのも、この活火山のお蔭。そんな那須には農業を営む人も多く、さらに林業、酪農、観光業など、恵まれた自然と共に那須が支えられています。

緑に包まれて建つホテルの慎ましいサインは木製。自然に溶け込むよう、すべての資材にも注意が払われる。

この豊かな自然の中で星野リゾートは、日本で初めて本格的に新たなる観光業に挑戦し始めました。それが“アグリツーリズモリゾート”という農業と観光・ホテル業を合わせた新しい旅の仕方の提案です。まさにこの地域のすべての魅力を湛え、人が生きる糧となる農業の大切さや奥深さと共に、季節感あふれる高原リゾート滞在の醍醐味をゲストは楽しみながら体験できるのです。

1階には大きな窓と広いリビングスペース、2階には寝室、窓の外には田んぼや木々。グリーン一色の客室は、木々をテーマにした本館にある「本館 デラックスメゾネット」(62㎡)。

そもそもアグリツーリズモとは、イタリア語で農業(アグリクルトゥーラ=英:アグリカルチャー)と観光(ツーリズモ=英:ツーリズム)が合体してできた造語です。1960年代にアグリツーリズモが始まったイタリアでは、国がアグリツーリズモの定義を整備し、2006年には法律を改正しました。宿泊を伴い、アクティビティとして農林業や動物飼育、蜂蜜作り、ジャム作り、クッキング、乗馬、トレッキング、ワイン醸造のためのブドウ収穫などを行います。地域の魅力を世に送り出し、地域の農業遺産などの価値を高める作業を滞在者と共に実施し、同時に楽しみとする“旅の形”として定着しているのです。

「グリーンハウス」では、ハーブティー作りや農家の手仕事など、さまざまなアクティビティが楽しめる。写真は2020年夏~秋の夕刻に行われた「夕涼みグリーンバル」でのハーバルドリンク、枝豆、ピクルスのセット(有料)。

私自身も何度かイタリアでアグリツーリズモの宿に泊まり、体験を試みました。印象に残っているのは、フィレンツェの郊外の大きな農場を所有する農家に泊まり、蜂蜜作りやフルーツ収穫を体験し、マダムの作る素朴で美味しい家庭料理に舌鼓を打ったこと。

もう一つ、イタリアのシエナ郊外で大きなワイナリーを所有するシャトー(城)のアグリツーリズモに参加したことです。ブドウの収穫が終わった時期でしたので、収穫は手伝えませんでしたが、簡単な畑仕事やワイナリー見学、畑で採れたルバーブやブルーベリーを使ってスタッフと共に焼き菓子を焼いたことも印象的な思い出です。何よりも、ワインになる前のできたばかりの芳醇なブドウジュースを毎日いただき、優雅な中世のシャトーで田舎生活を送ったことが、今でも映画のワンシーンのように記憶に残っています。

アクティビティ施設「POKO POKO(ポコポコ)」内では、石窯で焼き上げるイタリアンピッツァ作りが体験できる。最後に石窯で焼き上げるのはスタッフ。もちろん焼き立てをランチとして食べることも可能!

このようにヨーロッパで生まれ、イタリアで大きな成果を挙げ、世界に広がりを見せたアグリツーリズモですが、日本での捉え方は、当初“都会の喧噪から離れ、田舎生活を楽しむ”くらいの旅のスタイルと考えられてきました。しかし現在では、より踏み込んだ本格的な農業体験もできる旅の方法であることが、やっと認識されるようになりました。その意味からも「リゾナーレ那須」の存在感は重要です。

野菜やフルーツたっぷりのサラダ、ヨーグルト、野菜スープ、そして卵料理にソーセージやハム類、焼き立てパンとコーヒー。食べきれないほどに詰まったBOX入りの朝食は、ピクニックのように外でも、各客室でも、好きな場所で食べられる。

大地の生命力と共に歩むアグリツーリズモリゾート「リゾナーレ那須」がスタートを切ったのは、2019年11月1日。種蒔きや農業体験、収穫など、まずは土に触れること、そして自然を楽しむこと、さらに農閑期に入った農家の手仕事を学ぶなど、農業と共にあるライフスタイルの一部を身近に触れることで旅の歓びを感じ、楽しみながら無理なく体験できるようリゾートが様々に提案しています。

日常的に私たちが口にし、私たちの生きる糧となる米や麦、野菜や果物がどう成長し、どのように実るのかをファミリーで知る貴重な機会ではないでしょうか。