子どもの性被害が、近年増加している。警視庁のサイト「なくそう、子どもの性被害。」によれば、令和元年における児童買春事犯等(児童買春、淫行させる行為(児童福祉法)、みだらな性行為等(青少年保護育成条例))の検挙件数・検挙人員・被害児童数は、2,629件、2,037人、1,754人で、いずれも前年比で増加。

合わせて、令和元年における児童ポルノ被害および「児童が自らを撮影した画像に伴う被害」に遭った児童数は、過去最多を記録したとある。

筆者のAiさんは、保健室の先生として様々な学校に10年勤務するなかで、授業では伝えきれない「性のこと」の多さにもどかしさを感じ、Twitterで「コンドームソムリエ」の活動を始めた。

子どもの性被害を食い止める手段として重要になるのが「性教育」だ。「性教育」というと、セックスについて教えると考える大人も多いが、実際に性教育で学ぶべきことは性行為そのものではない。大人がそう考えてしまう理由は、従来の学校の性教育に問題があるからだとAiさんはいう。

私たちが受けていた「性教育」

みなさんは「性教育」にどんなイメージを持っていますか? 最近では、SNSやニュースメディア等で性教育がクローズアップされることが増えています。その理由の一つとして、学校現場における性教育の不十分さが取り上げられます。

正直なところ、私は自分が小学校から高校までに受けた性教育の授業に関して、ほとんど記憶がありません。小学校の宿泊行事前に「生理について」の説明をされたこと、高校1年生の保健の授業でHIV/AIDSに関して学んだこと、それらのおぼろげな記憶はありますが、それ以外の記憶はほとんど残っていません。もしかするとそんな人がほとんどなのではないでしょうか。

自分が受けた性教育はほぼ思い出せなかった私も養護教諭(保健室の先生)となり、保健体育の授業を通して性教育を行なってきました。皆さんもご存知の通り、学校の授業は文部科学省が出している「学習指導要領」をベースに作られています。

学習指導要領は「どこの学校でも同じ教育水準を保つ」ために作られている「基準」であり、それをもとに教科書が作られ、各学校で授業が構成されます。発達段階に即して段階的に学べるように構成されているなど便利な一方で、学習指導要領を大きく逸脱して指導することは難しく、我々教員が「教科書以上のことを教えることができない」理由のひとつでもあります。

例えば中学校の保健体育の教科書では「受精」や「性感染症」については学びますが「性交(セックス)」や「避妊」「人工妊娠中絶」に関しては学習指導要領で「取り扱わない」とあるので、教科書には出てきません。

そのため、性交を教えずに受精について教えなくてはいけないため、教科書では膣や子宮の中にすでに精子が存在している図から説明しなくてはなりません。コンドームは「性感染症予防具」としてのみ紹介されますが、イラストや写真はなく、具体的に付け方の指導等は行いません。

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また、教える教員も中高であれば保健体育課の教員がメインとなりますが、必ずしも性教育に関して十分な知識や最新情報を持っている教員が指導にあたっているわけではありません。成績をつけるために一問一答の試験で知識を問い、その結果で「理解したかどうか」を評価しがちです。

性教育に割ける授業時間は年間でわずか数時間です。他にも教えなくてはいけない単元が山ほどあるため、性教育を意欲的に実施するためには授業以外の時間を確保する必要があります。また担当教諭や管理職、保護者、地域との協力体制も影響します。つまり、子供達が十分な性教育を受けられるかどうかは、子供達を取り巻く大人たちに委ねられているのです。